仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 両手を大きく振って遠慮する。修吾の家族の前で婚約者の演技なんて滅相もない。


 「ちなみに母は俺が小学生のときに病気で他界して、高校生のときに父が再婚してる。その相手との間に生まれた弟は大学三年生。俺とは十五歳差だ」
 「そうだったんですね」


 年の離れた異母兄弟というわけだ。


 「さて、これで晴れて一緒に暮らせるようになったわけだし、早速次の週末にでも引っ越そうか」
 「ええっ!?」


 そんなに早く行動に移すのかと驚く。せいぜい八月の末、一カ月くらい先だと勝手に思っていた。


 「困る?」


 修吾は普段の落ち着いた眼差しをわずかに緩め、ほんの少しだけ首を傾げるようにして誌史を見つめた。
 甘えるでもなく懇願するでもなく――しかし不思議と〝断らないでほしい〟という思いがその瞳に滲んでいて、胸を直撃する。

 大人の男性らしい余裕の中に、かすかな無防備さが覗くその表情に、誌史は思わず息を呑んだ。


 「……大丈夫、です」
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