仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 できるだけ自然に声を明るくする。それが、せめてもの自分の精一杯だ。


 「たくさん食べてくれ。それと来週末、誌史の予定は?」
 「特になにもありませんが……?」
 「フランス大使館で開かれる会食に一緒に出席してほしいんだ」


 新たな予定を提示され、下向きだった気持ちがわずかに上を向く。少なくともその日までは、修吾の婚約者でいられるからだ。
 それに大使館で開催されるとなれば、仕事以外で外国語に触れるチャンスでもある。


 「はい、もちろんです」
 「急に元気になった」


 修吾が笑う。そうして自然と向けてもらえるようになった笑顔を、今はまだそばで見ていたい。


 「海外の人と会える機会なので」
 「誌史は勉強家だな」
 「修吾さんには敵いません」


 修吾は少しだけ首を横に振り、照れ隠しのようにお茶を口に運ぶ。
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