仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「夕食を食べ終わったら、少しフランス語のレッスンをお願いしてもいいですか?」
 「もちろん」


 一緒に暮らすようになってから、修吾にはちょくちょくフランス語を教えてもらっている。通訳として通用するようになるのはまだまだ先だが、少しずつセンテンスを聞き取れるようになってきた。
 いつかは英語もフランス語も自在に操れるように、そしてその先にはべつの言語も学びたい。

 ふたりの会話は、そこから料理のことや今日の出来事といった他愛もない話に移っていく。チャーハンをスプーンですくいながら、「この香ばしさはお米を強火で炒めたからですか?」と誌史が首をかしげれば、修吾は「その通り」と得意げに答える。

 ついこちらまで笑顔になるやりとりや野菜スープの優しい味が口に広がるたびに、張り詰めていた心が少しずつほぐれていくのを感じた。


 「こうやって一緒に食べると、いつもより美味しく感じるな」
 「そうですね。私もそう思います」


 誌史はスプーンを口に運びながら、ひと時のささやかな幸せを胸いっぱいに抱きしめるように味わった。
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