仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
その日、仕事を終えて会社を出たところで後ろから名前を呼ばれた。
「誌史ちゃん」
振り向くと、里依紗が軽やかに歩み寄ってくる。グレーのスーツに身を包んだ姿は仕事帰りらしく、それでもどこか華やかさを纏っていた。
「ちょうどよかった。少し一緒に歩いてもいい?」
「……ええ、はい」
断る理由もなく並んで歩き出すと、すぐに里依紗が切りだした。
「その後、お母さんの具合はどう? 倒れたって聞いたから心配してたの」
「ありがとうございます。容態は安定していて、もうすぐ退院できそうなんです」
「そうなのね。よかったわ」
優しく微笑む里依紗に、誌史はわずかに肩の力を抜いた。
だが、次の言葉でまた胸が固くなる。
「今日ね、神谷さんとお仕事がご一緒だったの」
「そう、でしたか……」