仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 視線が絡むと同時に、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。久しぶりに見る修吾の顔、深く澄んだ瞳。そのひと言にさえ、鼓動は速まっていく。しかしそれは、会えた嬉しさ以上に、別れが近づいているという恐怖からくる緊張でもあった。


 「あの……ありがとうございます。さっき、私のこと……」


 やっと絞りだしたお礼の声が震える。
 修吾は短くうなずくだけで、じっと誌史を見ていた。その眼差しに込められているものを読み取るのが怖くて、思わず視線を逸らす。


 「誌史、話したいことがある」


 思い詰めたような声に、誌史の背筋がびくりと震える。
 その言葉の続きなら知っている。
 婚約者のふりは、もう終わりにしようと言おうとしているのだ。


 「あ、あのっ、私、行かなくちゃ」


 慌ててバッグを掴み、出口へ向かおうとする。
 だが次の瞬間、腕を掴まれた。温かく強い力が、誌史をその場に引き止める。


 「待て」
< 232 / 289 >

この作品をシェア

pagetop