仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
母、蛍が退院したのは一週間後のことだった。
まだ少し顔色は冴えず、動くたびに「ふう」と息をつく様子に、誌史は自然と手が伸びる。
「お母さん、無理しないで。お皿は私がやるから」
「いいのよ、もうすっかり元気なんだから」
そう言いながらも、蛍はぎこちなく立ち上がる。
誌史は慌てて椅子を引き、そっと肩を支えた。
テーブルの上には、誌史が作ったみそ汁と白身魚のムニエルが並んでいる。
退院してからというもの、毎日食事に気を配り、病院でもらったレシピを見ながら塩分を控えた献立を続けている。
「ほんと、誌史がいると助かるわ。神谷さんには悪いことしちゃってるわね」
「そんなことないから」
「でも……お母さんも無事退院したし、神谷さんのところに早く帰ってあげたら? 心配してるんじゃない?」
母は少し申し訳なさそうに笑った。
その会話を隣で聞いていた父、京志郎が続ける。
「そうだぞ、誌史。母さんも少しずつ動けるようになってきたし、そろそろ自分の暮らしに戻っていいんじゃないか?」
「お父さんまで……」