仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 「神谷くんだって、寂しがってるだろう」


 からかうように笑う父の顔に、誌史は思わず頬を染めた。

 修吾と想いを告げ合ってからというもの、毎晩のように電話で話をしているが、あれきり顔は合わせていない。仕事で会えるのを期待していたが、そういうとき限ってないもの。声を聞くたびに会いたさは募るが、今は母の回復が優先だ。


 「もう少しだけ。もうちょっとだけ様子を見たいの」
 「まったく、昔から心配性ねぇ」


 蛍は苦笑し、京志郎は「仕方ないな」と言いながら湯呑みに口をつけた。

 夜になると誌史は蛍が眠りにつくまでの間、隣の部屋で資料を広げ、通訳の勉強を続ける。

 (もう少し……もう少しだけ)

 母の寝息をたしかめながら、誌史はそう胸の中でつぶやく。

 修吾の顔がふと浮かび、愛しさは募るが、今は両親との、この時間を大切にしたかった。
 
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