仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです

 そうして十日が経った朝食の席で、蛍はいつになくしっかりとした声で言った。


 「ねえ、誌史。もう大丈夫だから、そろそろ帰りなさい」
 「え?」
 「昨日は散歩もできたし、体調も悪くないの。ねえ、お父さん」
 「ああ。誌史がいなくても、ふたりでなんとかやっていけるさ」


 京志郎が新聞を畳みながらうなずくと、蛍はやわらかく微笑んだ。


 「お母さんのことなら、ほんとに心配いらないわ。それに……神谷さんに会いたいんでしょ?」
 「……そんなこと」
 「顔を見ただけでわかるの。電話してるときの声、全然違うもの」


 からかわれて、誌史は俯いたまま苦笑した。


 「もう、やだ、お母さんってば」


 恥ずかしくて頬が一気に熱を持つ。
 想いが通じ合ったせいか、会いたさはこれまでの比ではなかった。
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