仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 (ということは、私が十代に見えたってこと? ……そんなに子どもっぽいかな。でも神谷さんに比べれば、まぁそうよね)

 自分の質問に自分で答えて納得する。


 「神谷さんはおいくつですか?」
 「三十五。今年三十六歳になるから、誌史さんとはちょうどひと回り差だ」
 「ひと回り……」


 大人っぽいのではなく、大人そのものだ。


 「乾杯しよう」


 低く響く声につられてグラスを合わせた。澄んだ音が空間に溶けていく。
 ひと口含むと、芳醇な香りが口の中に広がる。果実味とスパイスの余韻が長く続き、誌史は思わず目を細めた。


 「美味しい……」


 自然にこぼれた言葉に、修吾は満足げにうなずく。
 ほどなくして前菜が運ばれてきた。白い皿の上に美しく盛り付けられたサーモンのタルタル、キャビアを添えたブリニ、そして香ばしいバゲット。どれも芸術品のようで、食べるのが惜しいほどだ。
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