仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 彼の明るさと優しさが、いつの間にか心の整理を手伝ってくれていたのだ。


 「里依紗のこと、少し話してもいいか?」


 夏生が不意に切りだす。


 「はい、なにかあったんですか?」


 里依紗はあの一件で言語サービス部から総務部に異動になったが、一カ月ほど前に退職した。あのような事を起こさなければ、素晴らしい通訳でいられたのにと思うと残念でもある。


 「この前、仕事で里依紗を子どもの頃から知っている人と会ったんだ。なんで里依紗があんなことをしたのかずっと不思議でさ。でも、その人から話を聞いて妙に納得した」
 「どんな話だったんですか?」
 「里依紗の行動の裏には、幼い頃からの〝愛されたい〟〝選ばれたい〟という異常に強い承認欲求があったみたいだ」


 夏生がぽつぽつと語りはじめる。

 里依紗は〝いつでも完璧でありなさい〟と言う両親の期待に応える良い子として育ち、常に周囲から褒められることで自分の価値をたしかめてきたという。
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