仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
やがて地下鉄の改札を抜け、会場がある国際フォーラムのエントランスが見えてくる。
大理石の床に朝日が反射し、人々の足音が規則正しく響く。
胸の奥で緊張がわずかに高まるが、誌史は深呼吸をひとつして歩みを止めなかった。
(――行こう)
心の中で静かにそう呟き、会場の扉をくぐると、すでに大勢の関係者の姿があった。その中にいた夏生が誌史に気づき、足早に近づいてくる。
「おはようございます」
「おはよう。どう? 緊張してる?」
夏生は書類を手にしたまま誌史の顔を覗き込んだ。
「やっぱり少しは」
「まぁそうだよな。でもいつもの通りの誌史ちゃんなら大丈夫だろう。気負わずいこう」
夏生の言葉にうなずき、ブルームコミュニケーションズの控室に向かう。
告白の一件があってから、夏生とはしばらくぎくしゃくした時期があったが、今ではそれが嘘みたいに以前のように話せている。それはとりもなおさず、夏生から『これまで通り先輩と後輩でいよう』と言われたからであり、その言葉に誌史は救われた。