仮面フィアンセ〜憧れの外交官からの執着愛に今にも陥落しそうです
 言葉がうまく出てこない。謝ることで距離を取ろうとしていた自分に気づいて、急に恥ずかしくなった。
 同時に彼のさり気ない気遣いが心にすっと入り込んでくる。今の言葉は、誌史の心を軽くするためのものでもあるだろう。


 「ごめんなさい、じゃなくて……ありがとうございます」


 誌史は軽く頭を下げ、修吾の目を見た。


 「すごく、心強かったです」


 修吾がやわらかな笑みを浮かべる。


 「それならよかった」


 その笑顔に胸の高鳴りを覚えずにはいられない。

 (やだな、もうどうして。神谷さんは私じゃなくても、こうして助けたに違いないんだから)

 勘違いするなと自分を制す。

 会話が一段落すると、誌史たちは並んだベッドにそれぞれ腰を下ろした。間には小さなナイトテーブルがひとつ。ランプのやわらかな光が部屋の空気を穏やかに包んでいる。
< 35 / 289 >

この作品をシェア

pagetop