最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
*
「ここからは歩いていこう」
細い路地の手前で馬車を停めると、シルヴィオはリーゼの手を引いて、うっすらと雪の積もる石畳の上へ降り立った。
バルタザールの宝石店は、大通りに面した路地にあるようだった。
しかしながら、心配していたような物々しさはなく、雪を溶かす日差しの差し込む路地裏からはパンの焼ける香ばしい匂いがし、採れたての野菜を並べる露店もあった。
リーゼは露店の前で足を止めて、土をきれいに洗い落とした色とりどりの野菜を眺めた。
ヴァルディエ公爵の屋敷にリーゼが連れてこられたのは、11歳の時だった。それまでは、優しい両親、2歳になる弟リヒトと、貧しいながらも笑顔のあふれる生活を送っていた。
母がリヒトをおぶって洗濯や食事の準備をする間、リーゼは父を手伝って畑仕事をよくした。荷馬車に積んだ採れたての野菜を町へ売りに行った日々は、儚くも懐かしい思い出の一つだった。
「リーゼ、珍しいか?」
シルヴィオがいぶかしそうに話しかけてくる。公爵令嬢が足を止めるような店ではないと、彼の表情を見ればすぐにわかった。
「あ……ええ。街へ出るのは、初めてなものですから」
「……そうだったな。あなたは幼いころ、部屋から一歩も出られないほど病弱であったと聞いた。これからは俺がどこへでも連れていこう」
手を差し伸べられ、リーゼは笑顔でその手を取った。
シルヴィオなら生まれ故郷へ連れていってくれるかもしれない。
淡い期待が浮かんだが、リーゼが彼を監視しているように、リーゼもまたアルブレヒトに監視されている。
「ここからは歩いていこう」
細い路地の手前で馬車を停めると、シルヴィオはリーゼの手を引いて、うっすらと雪の積もる石畳の上へ降り立った。
バルタザールの宝石店は、大通りに面した路地にあるようだった。
しかしながら、心配していたような物々しさはなく、雪を溶かす日差しの差し込む路地裏からはパンの焼ける香ばしい匂いがし、採れたての野菜を並べる露店もあった。
リーゼは露店の前で足を止めて、土をきれいに洗い落とした色とりどりの野菜を眺めた。
ヴァルディエ公爵の屋敷にリーゼが連れてこられたのは、11歳の時だった。それまでは、優しい両親、2歳になる弟リヒトと、貧しいながらも笑顔のあふれる生活を送っていた。
母がリヒトをおぶって洗濯や食事の準備をする間、リーゼは父を手伝って畑仕事をよくした。荷馬車に積んだ採れたての野菜を町へ売りに行った日々は、儚くも懐かしい思い出の一つだった。
「リーゼ、珍しいか?」
シルヴィオがいぶかしそうに話しかけてくる。公爵令嬢が足を止めるような店ではないと、彼の表情を見ればすぐにわかった。
「あ……ええ。街へ出るのは、初めてなものですから」
「……そうだったな。あなたは幼いころ、部屋から一歩も出られないほど病弱であったと聞いた。これからは俺がどこへでも連れていこう」
手を差し伸べられ、リーゼは笑顔でその手を取った。
シルヴィオなら生まれ故郷へ連れていってくれるかもしれない。
淡い期待が浮かんだが、リーゼが彼を監視しているように、リーゼもまたアルブレヒトに監視されている。