最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
*
夜になると窓の外には雪がちらつき、冷え込みは一層厳しくなった。
けれど、リーゼは凍えるような寒さには慣れていた。かじかむ手をこすり合わせて過ごす冬を何度も越してきたからだ。
暖炉の火を絶やさないよう、薪を足すシルヴィオを見るたびに、毛布一枚で震えていた公爵邸での日々が、いかに残忍であったかを思い知らされる。
同時に、弟リヒトのことが胸をよぎった。あの子は今頃、もっと酷い目に遭っているかもしれない。そう思うと、この生活に幸せを感じる自分に罪悪感もあった。
シルヴィオは火かき棒を置くと、窓際のソファーに腰掛けた。そうして、テーブルの上に置かれた首飾りをしげしげと眺めている。
昼間、バルタザールの店でリーゼが選んだ、あのブルーサファイアの首飾りだ。
特に不審なところはなかったはずだが、何か気になることでもあるだろうか。
「気に入ってくださいましたか?」
ベッドから抜け出したリーゼがそっと声をかけると、シルヴィオは驚いたように顔を上げた。
「……起きていたのか。寒かったか?」
いいえ、と首を振り、リーゼはちらりと首飾りを見て尋ねる。
「シルヴィオ様は……指輪の方がよかったですか?」
「ん? ……ああ、そんなことはない」
「ではなぜ、そんなにも気難しい顔で首飾りを眺めていたのですか?」
シルヴィオは顔面を手のひらでずるりとなでると、気まずそうに目をそらす。
「あ、いや、そんな顔をしてるつもりはなかった」
「本当ですか? 気に入らないのではと、心配してしまいました」
「……確かに、あのブラックダイヤモンドは、ヴァルディエ公爵の権威を示すには十分すぎる品物だったが、その尊さは、リーゼが俺のために選んでくれたものには到底及ばない」
夜になると窓の外には雪がちらつき、冷え込みは一層厳しくなった。
けれど、リーゼは凍えるような寒さには慣れていた。かじかむ手をこすり合わせて過ごす冬を何度も越してきたからだ。
暖炉の火を絶やさないよう、薪を足すシルヴィオを見るたびに、毛布一枚で震えていた公爵邸での日々が、いかに残忍であったかを思い知らされる。
同時に、弟リヒトのことが胸をよぎった。あの子は今頃、もっと酷い目に遭っているかもしれない。そう思うと、この生活に幸せを感じる自分に罪悪感もあった。
シルヴィオは火かき棒を置くと、窓際のソファーに腰掛けた。そうして、テーブルの上に置かれた首飾りをしげしげと眺めている。
昼間、バルタザールの店でリーゼが選んだ、あのブルーサファイアの首飾りだ。
特に不審なところはなかったはずだが、何か気になることでもあるだろうか。
「気に入ってくださいましたか?」
ベッドから抜け出したリーゼがそっと声をかけると、シルヴィオは驚いたように顔を上げた。
「……起きていたのか。寒かったか?」
いいえ、と首を振り、リーゼはちらりと首飾りを見て尋ねる。
「シルヴィオ様は……指輪の方がよかったですか?」
「ん? ……ああ、そんなことはない」
「ではなぜ、そんなにも気難しい顔で首飾りを眺めていたのですか?」
シルヴィオは顔面を手のひらでずるりとなでると、気まずそうに目をそらす。
「あ、いや、そんな顔をしてるつもりはなかった」
「本当ですか? 気に入らないのではと、心配してしまいました」
「……確かに、あのブラックダイヤモンドは、ヴァルディエ公爵の権威を示すには十分すぎる品物だったが、その尊さは、リーゼが俺のために選んでくれたものには到底及ばない」