最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
 青の瞳と間近で見つめ合い、強烈に惹きつけてくるまなざしに目を奪われる。どんなに煌やかなブルーサファイアよりも、彼は耐え難いほどに美しい。

 シルヴィオとの結婚が決まったとき、身分の低い男のもとへ嫁ぐことになったリーゼをあざ笑った使用人たちでさえ、公爵邸を訪れた彼を目にするや否や、さぞかしご立派な勲功を立てられた方なのだろうと感嘆したほどだ。

「この首飾りを外す日は二度とないだろう」

 力強い言葉に、リーゼは恐れを覚え、うっすらと笑む。
 まっすぐな愛を伝えてくれる彼に対し、自身の後ろめたさにおびえてしまう。

「そのように、大げさな」

 離れようとすると、シルヴィオはリーゼのあごを優しくつかんだ。

「大げさなどではない。もし、外す日が来るというならそれは、あなたが俺を失う日だ。そんな苦しい思いはさせやしない」

 死が二人を分かつ時──そんな言葉がよぎったが、重ねられる唇の情熱の前では、それ以上を深く考えることができなかった。

 父は言った。シルヴィオの求めを拒むな、と。良き妻として、愛嬌を振りまけと。
 愛する家族を失い、誰かを愛する資格もないと思って生きてきたリーゼが、それを実行するのは難しいと思っていた。

 しかし、シルヴィオの逞しい腕に包まれ、恥ずかしげもなく素肌を合わせ、貪欲に食らいついてくる唇に混じり合っていく幸福感は、意識せずとも溢れてくるものだった。

 図らずも、リーゼの美しさはシルヴィオを魅了した。それは彼女もまた、同じであった。
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