最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
(……すねてるのかしら?)

 リーゼはあっけに取られたが、すぐにハッとする。シルヴィオに愛想を尽かされるのだけは避けなければいけなかった。
 
「そんな……シルヴィオ様と過ごす時間は比べるものではありませんっ」

 あわてて叫ぶように答えると、シルヴィオは切れ長の目を大きく見開き、固まった。
 何か間違ったことを言っただろうか。不安になっていると、彼は口もとを緩め、わざとらしく咳払いをした。

「……その、あなたはフィンをずいぶんと大事にしているのだな」
「それはもう。フィンは私の親友なんです」
「親友?」
「はい。私がまだ幼いころ、この子が屋敷の庭に迷い込んできてから、ずっと一緒なんです」

 リーゼが懐かしむように微笑むと、シルヴィオはわずかに眉をあげた。

「そうか。あなたは中庭に出るのがやっとの生活をしていたのだったな」
「……はい。ですから、私には同じ年頃のお友だちはいないんです。知り合いさえいません」

 だから、公爵令嬢としての人脈は期待しないでほしい。そう暗に伝えたつもりだったが、シルヴィオは何か言いにくそうな顔つきをした。

「あなたはそのころ、中庭で誰かと会わなかったか?」
「え……?」
「誰かがフィンを探しに来たり、奇妙な男を見かけたりはしなかったか、と聞いている」

 探るような目を向けられ、リーゼは口をつぐんだ。
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