最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
おそらく、彼もまた、リーゼの真剣なまなざしを、公爵令嬢としての責務に満ちたものだと思ったようだった。
「……では、話そう。ノマール地方のエルラントは、カスパル・トゥクル辺境伯が治めていた」
「エルラント……」
無意識に、リーゼは手を握りしめていた。
こんなにもあっさりと、生まれ故郷の名をシルヴィオの口から聞けるとは思っていなかった。
「ああ。エルラントには、トゥクルのやり方に反発する反乱軍がいた。今から13年前のことだ。反乱軍の首領がトゥクルの暗殺を図り、ノマールは焦土と化した」
「長く……争いは続いたのですか?」
「いや……、前国王陛下の命で、ヴァルディエ公爵率いる軍が派遣され、反乱軍を制圧したんだ」
「では、今は……」
「トゥクルは死に、そのとき、反乱軍もすべて処刑されたと聞いた」
「すべて……反乱軍の首領もですか?」
シルヴィオは痛ましげに目を伏せたが、すぐに顔つきを引き締めた。
「当然だ。いくら、トゥクルに悪政を強いられた農民であったとしても、辺境伯殺害の罪は重い。首領である『ヨハン・ノイエル』の名は歴史に語り継がれてはならないと言われるほどだ」
「……なぜ、シルヴィオ様がそんな話をご存知なのですか?」
焦りを覚えるように、胸の鼓動が激しくなる。
ヨハン・ノイエル。
その名をリーゼは知っている。忘れるはずがない。父の名だからだ。反乱軍の首領に仕立て上げられ、殺された、父の──。
「……では、話そう。ノマール地方のエルラントは、カスパル・トゥクル辺境伯が治めていた」
「エルラント……」
無意識に、リーゼは手を握りしめていた。
こんなにもあっさりと、生まれ故郷の名をシルヴィオの口から聞けるとは思っていなかった。
「ああ。エルラントには、トゥクルのやり方に反発する反乱軍がいた。今から13年前のことだ。反乱軍の首領がトゥクルの暗殺を図り、ノマールは焦土と化した」
「長く……争いは続いたのですか?」
「いや……、前国王陛下の命で、ヴァルディエ公爵率いる軍が派遣され、反乱軍を制圧したんだ」
「では、今は……」
「トゥクルは死に、そのとき、反乱軍もすべて処刑されたと聞いた」
「すべて……反乱軍の首領もですか?」
シルヴィオは痛ましげに目を伏せたが、すぐに顔つきを引き締めた。
「当然だ。いくら、トゥクルに悪政を強いられた農民であったとしても、辺境伯殺害の罪は重い。首領である『ヨハン・ノイエル』の名は歴史に語り継がれてはならないと言われるほどだ」
「……なぜ、シルヴィオ様がそんな話をご存知なのですか?」
焦りを覚えるように、胸の鼓動が激しくなる。
ヨハン・ノイエル。
その名をリーゼは知っている。忘れるはずがない。父の名だからだ。反乱軍の首領に仕立て上げられ、殺された、父の──。