最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
(どうして……?)
リーゼは息をするのも忘れるほどに驚いた。
この結婚は、父……ヴァルディエ公爵の野望を遂げるための計画的なもの。愛など、かけらも必要とされていないはずだった。
だからこそ、意に沿わぬ結婚を強いられたシルヴィオは、口づけ一つだけで婚儀を終わらせ、戦地へ発ったのではなかったのか。
今さら、「会いたかった」と言われても、リーゼにはその言葉を信じることができなかった。
「シルヴィオ様……部下の皆さまはどうされたのですか? お食事の用意もしておりませんのに」
やんわりと諭すように、リーゼは背中に回した腕で、彼を引き離した。
すると彼はその手を取り、扉を開くと彼女を部屋の中へと押し戻した。
「その必要はない。屋敷へ着くなり解散させ、レナートへの報告は副官に押し付けた。明日は朝から小言を言われるだろうな」
レナートというのは、夫シルヴィオがもっとも忠誠を誓うブラッツ家の当主レナート公爵だ。
呼び捨てするのには驚いたが、レナートも若く、リーゼにはわからない関係性があるのだろうか。
「そんな……騎士団長が、それでよろしいのですか? レナート様は今ごろ、王城へ向かっているのではありませんか?」
「それはレナートの役目だ。……半年だぞ? あなたに会うのを我慢していたほうがよかったと言うのか」
シルヴィオは不機嫌な顔つきでつぶやいた。
派兵された騎士団が帰還したのだから、国王への報告は義務のはず。
何を言っているのか、この人はわかっているのかと、リーゼはあきれるよりも先に戦慄いた。
「でも、隣国との争いはいまだ続いていると……」
「停戦だ」
「え……?」
「今年の冬は雪が深い。兵の消耗は激しく、身動きが取れなくてな。春が来るまで、争いは起きない」
「では……」
「ああ、あなたの父上は春になればまた、俺を死地に送り出すだろう」
困ったようにシルヴィオは眉を下げるが、彼が派遣を断ることはないだろう。
長く続く隣国との国境沿いの紛争。
リーゼは息をするのも忘れるほどに驚いた。
この結婚は、父……ヴァルディエ公爵の野望を遂げるための計画的なもの。愛など、かけらも必要とされていないはずだった。
だからこそ、意に沿わぬ結婚を強いられたシルヴィオは、口づけ一つだけで婚儀を終わらせ、戦地へ発ったのではなかったのか。
今さら、「会いたかった」と言われても、リーゼにはその言葉を信じることができなかった。
「シルヴィオ様……部下の皆さまはどうされたのですか? お食事の用意もしておりませんのに」
やんわりと諭すように、リーゼは背中に回した腕で、彼を引き離した。
すると彼はその手を取り、扉を開くと彼女を部屋の中へと押し戻した。
「その必要はない。屋敷へ着くなり解散させ、レナートへの報告は副官に押し付けた。明日は朝から小言を言われるだろうな」
レナートというのは、夫シルヴィオがもっとも忠誠を誓うブラッツ家の当主レナート公爵だ。
呼び捨てするのには驚いたが、レナートも若く、リーゼにはわからない関係性があるのだろうか。
「そんな……騎士団長が、それでよろしいのですか? レナート様は今ごろ、王城へ向かっているのではありませんか?」
「それはレナートの役目だ。……半年だぞ? あなたに会うのを我慢していたほうがよかったと言うのか」
シルヴィオは不機嫌な顔つきでつぶやいた。
派兵された騎士団が帰還したのだから、国王への報告は義務のはず。
何を言っているのか、この人はわかっているのかと、リーゼはあきれるよりも先に戦慄いた。
「でも、隣国との争いはいまだ続いていると……」
「停戦だ」
「え……?」
「今年の冬は雪が深い。兵の消耗は激しく、身動きが取れなくてな。春が来るまで、争いは起きない」
「では……」
「ああ、あなたの父上は春になればまた、俺を死地に送り出すだろう」
困ったようにシルヴィオは眉を下げるが、彼が派遣を断ることはないだろう。
長く続く隣国との国境沿いの紛争。