最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
 それは、アルブレヒトがシルヴィオとの結婚を望んだにもかかわらず、結納金を出し渋った挙げ句、乳母やメイドを従えさせずに、リーゼを屋敷へ寄越したことだ。
 あのときは、はるかに格下の伯爵家に愛娘を嫁がせることに対する嫌悪感だとばかり思っていたが……。

 シルヴィオは一つ、頭を振る。

「それだけでは、証拠にはなりません」
「それだけじゃない。使用人がすべて入れ替えられたといううわさは、本当のようだ」
「すべて、ですか?」

 わが耳を疑うが、レナートの言葉は残酷だった。

「リーゼ・ヴァルディエの顔を知る者はすべてだ。……そう言ったらわかりやすいか?」
「それは、どういう……」
「ヴァルディエ公爵夫人が亡くなる少し前、リーゼ嬢の身の回りの世話をしていた使用人が大量に入れ替わったとうわさになったそうだ。その後、解雇された使用人たちは皆、行方不明だ」

 背筋がひやりとした。
 それはつまり、本物のリーゼ・ヴァルディエを知る者たちが、口封じのために消された可能性が高いというのか。

「いや、しかし……」

 まだそうと決まったわけではない。
 リーゼの柔らかな笑顔が、閉じたまぶたの裏にちらちらと浮かぶ。
 彼女が、偽物のリーゼ・ヴァルディエだなんて信じたくなかった。

「調べれば調べるほど、おかしなことばかりだ」
「ほかにも、何か?」

 すでに絶望が浮かんでいるだろうか。レナートはわずかに同情の色を浮かべて、こちらを見つめている。

「たびたび、おまえの屋敷から灰色の鳥が出入りしているとの報告がある」

 灰色の鳥だって……?
< 42 / 95 >

この作品をシェア

pagetop