最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
 すぐにフィンが浮かんだ。リーゼが大切にしている──彼女が唯一の親友だと語った鳥の姿が。

「少々珍しい鳥のようだが、思い当たることでも?」
「……いえ」

 シルヴィオは表情を押し殺し、首を横に振った。

 レナートは覚えていないはずだ。フィンが……異国から連れてこられたヨウムであることを。

「その鳥が……何か?」
「追跡したところ、ヴァルディエ公爵邸に飛んでいくようだ。足にはいつも紙をつけて。まるで、伝書鳩のようにな」
「リーゼが、公爵と密書を送り合っているとでも?」
「そう考えるのが、自然だ」

 シルヴィオは高ぶる怒りに似た何かを押し込めて、声を絞り出す。

「リーゼは……妻は、ヴァルディエ公爵夫人の葬儀に参列しています。あのときにはすでに入れ替わっていたとでも言うんですか」

 悲しみに暮れたリーゼの表情は忘れない。
 あれが、母を失った絶望でなければ、いったいなんだったというのか。

「私は……リーゼを信じます」

 シルヴィオは自身に言い聞かせるように、はっきりと告げた。

 彼女の細い身体が与えてくれるぬくもりも、恥じらいも、すべてが嘘だとは思いたくない。
 何がなんでも、彼女を信じたい。
 夫である自分が信じなければ、誰が彼女を守れるというのか。

 レナートはふっと息を吐くと、シルヴィオの肩をがっしりとつかんだ。

「……まあ、あくまでもうわさだ。あまりのめり込むなとだけ忠告しておく」
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