最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
*
ヴァルディエ公爵邸から戻ったリーゼは、心身ともに疲れ果てていた。
それでも、シルヴィオが帰宅するまでは起きていようと、暖炉の前で椅子にもたれたまま、すっかり暗くなった窓の外を眺めていた。
「奥様、お着替えをなさいましょう。顔色が優れませんわ」
ナイトドレスを片手に心配そうにするエルナに促され、リーゼは渋々立ち上がると、どこかギシギシと痛む身体を引きずるようにしてドレッサーの前へ移動した。
鏡に映る自分の顔を見て驚いた。目が落ちくぼんで、悲壮感が漂っている。これでは、エルナも心配するわけだ。
「シルヴィオ様はまだお帰りにならないの?」
「ブラッツ公爵様との食事会が長引いているのだとか」
「まだレナート様のお屋敷なのね……」
半年ぶりの帰還とあれば、積もる話もあるだろう。しかし、リーゼは落ち着かなかった。
アルブレヒトの懸念が正しければ、リーゼの正体にレナートが気づいている可能性があったからだ。
後ろに回り込むエルナが、背中のひもを解く。ドレスを脱がそうとした瞬間、彼女は息を飲むような悲鳴をあげた。
「お、奥様っ……!」
彼女の目は見開かれ、リーゼの背中に釘付けになっている。
「何か……」
リーゼは身をよじり、鏡に映るその姿を見て、ハッと息をのんだ。
白く滑らかな肌の真ん中に、赤黒いあざがあった。アルブレヒトに杖で打たれたときにできたものだろう。
こうして眺めていると、シルヴィオが綺麗だと言ってくれた肌が失われたようで、惨めさが込み上げてくる。
「なぜ、このようなことに……。すぐに薬を……っ」
あわてて部屋を飛び出していこうとするエルナを、リーゼは落ち着いて引き止める。
「いいの、エルナ。大したことないわ」
「ですが、奥様っ!」
理解しがたいような表情で、エルナが悲痛に叫んだ瞬間、窓の外が騒がしくなった。
馬のいななきに、使用人たちの話し声。にわかに階下が活気付いたようにあわただしくなる。
ヴァルディエ公爵邸から戻ったリーゼは、心身ともに疲れ果てていた。
それでも、シルヴィオが帰宅するまでは起きていようと、暖炉の前で椅子にもたれたまま、すっかり暗くなった窓の外を眺めていた。
「奥様、お着替えをなさいましょう。顔色が優れませんわ」
ナイトドレスを片手に心配そうにするエルナに促され、リーゼは渋々立ち上がると、どこかギシギシと痛む身体を引きずるようにしてドレッサーの前へ移動した。
鏡に映る自分の顔を見て驚いた。目が落ちくぼんで、悲壮感が漂っている。これでは、エルナも心配するわけだ。
「シルヴィオ様はまだお帰りにならないの?」
「ブラッツ公爵様との食事会が長引いているのだとか」
「まだレナート様のお屋敷なのね……」
半年ぶりの帰還とあれば、積もる話もあるだろう。しかし、リーゼは落ち着かなかった。
アルブレヒトの懸念が正しければ、リーゼの正体にレナートが気づいている可能性があったからだ。
後ろに回り込むエルナが、背中のひもを解く。ドレスを脱がそうとした瞬間、彼女は息を飲むような悲鳴をあげた。
「お、奥様っ……!」
彼女の目は見開かれ、リーゼの背中に釘付けになっている。
「何か……」
リーゼは身をよじり、鏡に映るその姿を見て、ハッと息をのんだ。
白く滑らかな肌の真ん中に、赤黒いあざがあった。アルブレヒトに杖で打たれたときにできたものだろう。
こうして眺めていると、シルヴィオが綺麗だと言ってくれた肌が失われたようで、惨めさが込み上げてくる。
「なぜ、このようなことに……。すぐに薬を……っ」
あわてて部屋を飛び出していこうとするエルナを、リーゼは落ち着いて引き止める。
「いいの、エルナ。大したことないわ」
「ですが、奥様っ!」
理解しがたいような表情で、エルナが悲痛に叫んだ瞬間、窓の外が騒がしくなった。
馬のいななきに、使用人たちの話し声。にわかに階下が活気付いたようにあわただしくなる。