最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
 とっさに話をそらそうとしたが、シルヴィオはそうさせまいと、リーゼの腕をぐっとつかんだ。

「聞いてくれ。大事な話だ。……実は、レナートが、王位簒奪を企てているとのうわさがあるらしい」
「それは……本当ですか?」

 ごくりとつばを飲み込んだリーゼの目が、きょろきょろと動いた。

「レナートは騒ぐ必要はないと言っていたがな。早急にこのことは書簡にして、陛下に知らせるつもりだ」
「陛下って……、なぜ陛下にっ?」

 そんなことをしたら、アルブレヒトがどう動くかわからない。
 リーゼは混乱しながら、叫ぶように尋ねていた。

「陛下の協力があれば、うわさの出どころはすぐに突き止められるだろう。俺はレナートの身の潔白を証明するつもりだ」
「そんな危ないことはおやめください。必要があれば、レナート様自らが陛下に進言なされるはずですっ」
「何が危ないものか。俺は守ると決めたものは守る男だ」

 歯ぎしりをするシルヴィオを見て、リーゼは「ああ……」と小さな声を漏らした。

 彼はレナートに忠誠を誓っている。それは、ヴァイス伯爵家がブラッツ公爵家のおかげで没落せずに済んだからだと聞いたことはあるけれど、リーゼが想像する以上に強固な絆があるのかもしれない。

 シルヴィオは呆然とするリーゼを優しく抱きしめ、肩に額を押し付けると、深く息をついた。

「だから……、あなたには俺を信じていてほしい」
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