最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
*
重苦しい緊張感に息をひそめるリーゼの心など、まったく気に留める様子のない鮮やかな青空が、窓の外には広がっていた。
シルヴィオはいつもより丁寧に身支度を整えながら、低い声でリーゼに話しかけた。
「これから王城へ行ってくる。……そんな苦しそうな顔はするな。陛下は冷静な判断をなされるお方だ」
「でも……、まだお若い方ですから、裏切り者が近くにいると知ったら、直情的にお怒りになるかもしれません……」
「リーゼは陛下を誤解している」
あきれたのか、情けなさそうに眉を下げたシルヴィオは、リーゼの頬をするりと撫でると、ほんの少し触れる程度の口づけをする。
「心配することはない。陛下の身に危険が及ぶ前に対処するのは、我が第一王国騎士団の使命だ」
力強い声とは裏腹に、ゆったりとした余裕のある笑みを見せる夫の姿は誇らしかった。
なぜ、こんなにも素敵な騎士との幸せな結婚が、これから先も続いていくと、ほんの一瞬でも信じていたのだろう。
後悔したくなるほどに、シルヴィオに心を奪われてしまっている自分に気づいて、リーゼはそっと彼の手をつかんだ。
離したら、もう二度と、こうして優しく見つめてもらえる日は来ないのではないかと怖かった。
「……陛下には、すぐにお会いできるのですか?」
「いや、まだわからない。本来なら宰相を通すべきだが……、実はあまり大きな声では言えないのだが、このところ、閣下の具合があまりよろしくないらしいのだ」
それをリーゼは知っている。
老齢のマシュー・ブライが病を患い、宰相を降りるとのひそかなうわさは、一年ほど前からある。次期宰相の座を狙うアルブレヒトの、待ちに待った機会がようやく巡ってきているのだ。
リーゼとシルヴィオを結婚させたのもそのためだ。マリウス陛下は必ず、次期宰相は誰が適任か、信頼するレナートに相談するだろう。その情報を、アルブレヒトは喉から手が出るほどに欲している。
重苦しい緊張感に息をひそめるリーゼの心など、まったく気に留める様子のない鮮やかな青空が、窓の外には広がっていた。
シルヴィオはいつもより丁寧に身支度を整えながら、低い声でリーゼに話しかけた。
「これから王城へ行ってくる。……そんな苦しそうな顔はするな。陛下は冷静な判断をなされるお方だ」
「でも……、まだお若い方ですから、裏切り者が近くにいると知ったら、直情的にお怒りになるかもしれません……」
「リーゼは陛下を誤解している」
あきれたのか、情けなさそうに眉を下げたシルヴィオは、リーゼの頬をするりと撫でると、ほんの少し触れる程度の口づけをする。
「心配することはない。陛下の身に危険が及ぶ前に対処するのは、我が第一王国騎士団の使命だ」
力強い声とは裏腹に、ゆったりとした余裕のある笑みを見せる夫の姿は誇らしかった。
なぜ、こんなにも素敵な騎士との幸せな結婚が、これから先も続いていくと、ほんの一瞬でも信じていたのだろう。
後悔したくなるほどに、シルヴィオに心を奪われてしまっている自分に気づいて、リーゼはそっと彼の手をつかんだ。
離したら、もう二度と、こうして優しく見つめてもらえる日は来ないのではないかと怖かった。
「……陛下には、すぐにお会いできるのですか?」
「いや、まだわからない。本来なら宰相を通すべきだが……、実はあまり大きな声では言えないのだが、このところ、閣下の具合があまりよろしくないらしいのだ」
それをリーゼは知っている。
老齢のマシュー・ブライが病を患い、宰相を降りるとのひそかなうわさは、一年ほど前からある。次期宰相の座を狙うアルブレヒトの、待ちに待った機会がようやく巡ってきているのだ。
リーゼとシルヴィオを結婚させたのもそのためだ。マリウス陛下は必ず、次期宰相は誰が適任か、信頼するレナートに相談するだろう。その情報を、アルブレヒトは喉から手が出るほどに欲している。