最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
「フィンは何も知りません! ……ただ私の言葉を真似ているだけですっ」
「そうであったとしても、フィンはすべてを見聞きしているのだろう? あなたの秘密を知っているはずだ」

 シルヴィオは鳥籠を開けると、そっと腕を差し伸べた。フィンは何も疑う様子なく、その腕に飛び乗ると、首を傾げた。

「なあ、フィンよ。俺にだけ教えてくれないか、リーゼの秘密を。リーゼはおまえにいつも何を語りかけるのだ?」
「リーゼ……?」

 何度も首をかしげるフィンの様子を、リーゼは固唾を呑んで見守った。

(どうか、リヒトのことは言わないで……)

 リーゼが強く祈ったとき、フィンはまるで歌うように高らかな声を放った。

「シルヴィオ、アイシテル。リーゼ……、シルヴィオ、アイシテル」

 瞬く間に緊張感が弾け飛ぶ。

「……はっ」

 シルヴィオは短く息を吐き出すと、大きな手で顔を覆った。その頬がかすかに赤らんでいて、リーゼもまた真っ赤になった。

「そういうわけか……」

 彼はつぶやくと、いきなりリーゼを抱き上げる。驚いたフィンは鳥籠の中へ飛び込んでいった。

「シ、シルヴィオ様……?」
「あなたは俺を心配するあまり、公爵の命令に背いた。そう解釈していいか?」

 ソファへストンと座った彼は、腕の中で身をすくめる彼女の頬やひたい、こめかみに口づけを落として、優しく抱き寄せる。

「なぜそれほど頑なになるのか教えてほしい。あなたが言わなければ、明日の朝にはレナートが動く」
「レナート様が、何を?」
「レナートはヴァルディエ公爵について、とある疑いを持っている。しかし、証拠は何もない。その証拠を見つけるため、ノマールへ向かうつもりだ」
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