最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
 シルヴィオは困惑したように眉を寄せた。

「違います……。13年前に生き別れになった、私の実の弟です。実は……お父さまから、これが送られてきたんです……っ」

 リーゼは震える手で胸もとから血の付いた真鍮のロケットを取り出した。

「なんだこれは?」

 無残に引きちぎられた鎖と、こびり付いた血痕を見て、シルヴィオの顔色が変わる。

「母がリヒトに持たせたペンダントです」
「どういうことだっ? わかるように話せ」
「お父さまはリヒトを人質にしています。今回、私が失敗したら、リヒトの命はないと……そう知らしめるために、このペンダントをフィンに持たせたんです……」

 シルヴィオは頬をぴくりと動かし、悔しげに唇を噛むと、呆然とするリーゼを強く抱きすくめた。

「あなたは弟の命を盾に取られながら、それでも俺を裏切らなかったのか……」
「私が一人で、助けてあげられると思っていたんです」

 リーゼはそっと腕を伸ばし、シルヴィオの背中に手を回した。

「でも……助けてあげられませんでした」

(シルヴィオ様を愛してしまわなければ、こんなことにはならなかったのに……)

 リーゼの絶望が伝わったのか、シルヴィオも強く彼女を抱きしめ返す。

「あなたのことは必ず、俺が守る。そして弟もだ」
「……リヒトも?」

 顔を見上げると、彼ははっきりとうなずいた。

「教えてくれ。あなたの弟はエルラントに?」
「……わかりません。でも、お父さまは紛争の最中、エルラントから私だけを王都へ連れてきました。だから、エルラントにまだいるのではと」
「暁の反乱の話をしているのか?」
「暁の……反乱?」
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