最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
「ああ、13年前に起きた、暁の紋章を掲げる反乱軍ヨハン・ノイエルの反乱をそう呼ぶ。ならば、あのときの捕虜はいまだエルラントにいるはず」
「ほ、本当ですか?」
「可能性は高い」

 シルヴィオは素早く立ち上がると、こぶしを握った。

「エルラントへ向かう」
「シルヴィオ様、お一人で? お父さまに知られたら……!」
「心配するな。ヴァルディエ公爵はレナートに足止めしてもらう」

 ギリギリと歯ぎしりをしながら部屋を出ていこうとするシルヴィオの背中を、リーゼは引き止めた。

「シルヴィオ様っ!」
「まだ何かあるのか?」

 リーゼはつばを飲み込むと、意を決して告げた。

「……ヨハン・ノイエルは私の実の父です。父は反乱軍の首領ではありません。何者かに罪を着せられたのです」

 シルヴィオは目を見開いたが、グッと表情を引き締めた。

「わかった。その汚名も、俺が必ず晴らしてみせる」

 彼はすぐさま部屋を飛び出すと、執事のシモンを呼びつけ、すぐにやってきた彼に命じた。

「今すぐ、リーゼをレナートの屋敷へ連れていけっ!」
「奥様おひとりで……でございますか? 旦那様は……」
「俺はすぐにエルラントへ向かう。事の詳細は、リーゼからレナートに話す」

 おろおろと戸惑いながらも、シモンは立ち去る。そしてシルヴィオは、不安げなリーゼに向き直り、言った。

「レナートは俺の命の恩人であり、最も信頼できる人物だ。絶対にあなたを守ってくれる。信じて待っていてくれ」

 その言葉に、リーゼも覚悟を決めて涙を拭い、大きくうなずいた。

「はい。あなたを信じて、待っています」
< 63 / 95 >

この作品をシェア

pagetop