最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
 当時、レナートは18歳だったが、両親を亡くしたばかりで、すでに公爵の地位についていた。

 山賊はあっという間に縛り上げられ、荷も返ってきたが、深い傷を負った父は助からなかった。

 レナートは父を丁寧に弔うと、身寄りのないシルヴィオをブラッツ邸へ連れていき、下働きの仕事を与えた。

 今でもレナートは、『あのときはそうしてやりたい気分だった』と笑って話す。

 彼の気まぐれで助けられたとはいえ、シルヴィオは恩を返すため、薪割りも馬の世話も一生懸命にやった。

 あるとき、なんでも器用にこなすシルヴィオにレナートは興味を持ち、読み書きを教えてくれた。

 それから一年後、レナートに『子のいないヴァイス伯爵家の養子になるのはどうか?』と聞かれ、承諾した。

 断絶の瀬戸際にあったヴァイス家もまた、ブラッツ家当主のお墨付きであるシルヴィオを、喜んで迎え入れた。

 ヴァイス家は代々、騎士を輩出している名門だった。それにならい、シルヴィオも騎士団入隊試験を受け、騎士の道を歩むことになった。

 そして、14歳のとき──あの葬儀で、リーゼに出会った。

 葬儀から帰ってきたあと、来る日も来る日も剣の訓練に励んだ。しかし、ふとしたときにはリーゼを思い浮かべていた。

 今まで美しい貴族の娘たちは目にしてきたが、彼女たちは若き公爵レナートの気を引こうと互いの足を引っ張り、少しも魅力的ではなかった。
 それに比べ、リーゼは守ってやらなければ消えてしまうんじゃないかと不安になるほどの魅力を持っていた。

 気の進まない社交パーティーにも参加してみたが、リーゼは一度も現れなかった。悶々と過ごしていたある日、レナートに「ヨウム探し」を頼まれた。

 なんでも、異国から取り寄せたヨウムという鳥が荷物から逃げ出し、ヴァルディエ公爵邸に逃げ込んでしまったというのだ。
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