最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
***
通されたのは、壁一面に書物が並ぶ執務室だった。
革張りのソファに深く腰掛けた金髪の青年、レナート・ブラッツ公爵は、リーゼが差し出したシルヴィオの手紙に目を通していた。
うわさに違わぬ爽やかな風貌をしている彼だが、そのまなざしはどこかつかみどころがなく、油断ならない人物に見えた。
レナートは手紙を折りたたむと、呆れたように鼻を鳴らした。
「まったく……無茶を言うな、シルヴィオは」
「あの……何と書いてありますか?」
恐る恐る尋ねると、レナートは片方の眉を器用に持ち上げたあと、愉快そうに口元を緩めた。
「『数日、妻のリーゼを預かってほしい。くれぐれも丁重にお願いする』……とまあ、私を誰だと思って口をきいてるのか。いい度胸だな」
「……申し訳ございません」
「いや、謝ることはない。あいつがそこまで必死になるのが珍しくて、面白いだけだ」
レナートは手紙をテーブルに置くと、柔和な表情を引き締め、探るような鋭い瞳をリーゼに向けた。
「さて、リーゼ嬢。あいつが私への説明を省いて無鉄砲に飛び出すなど、よほどの事態だ。何があったか、詳しく聞かせてくれるか?」
促され、リーゼはこくりとうなずく。
「はい。……まずは、私の出生について、お話しなければなりません」
リーゼは意を決して語った。
自身は、カスパル・トゥクル辺境伯を死に至らしめた暁の反乱軍首領、ヨハン・ノイエルの娘であること。
アルブレヒトに弟のリヒトを人質に取られ、夫の動向をスパイしていたが、命令に逆らったため、リヒトの身に危険が及ぶ可能性があること──。
通されたのは、壁一面に書物が並ぶ執務室だった。
革張りのソファに深く腰掛けた金髪の青年、レナート・ブラッツ公爵は、リーゼが差し出したシルヴィオの手紙に目を通していた。
うわさに違わぬ爽やかな風貌をしている彼だが、そのまなざしはどこかつかみどころがなく、油断ならない人物に見えた。
レナートは手紙を折りたたむと、呆れたように鼻を鳴らした。
「まったく……無茶を言うな、シルヴィオは」
「あの……何と書いてありますか?」
恐る恐る尋ねると、レナートは片方の眉を器用に持ち上げたあと、愉快そうに口元を緩めた。
「『数日、妻のリーゼを預かってほしい。くれぐれも丁重にお願いする』……とまあ、私を誰だと思って口をきいてるのか。いい度胸だな」
「……申し訳ございません」
「いや、謝ることはない。あいつがそこまで必死になるのが珍しくて、面白いだけだ」
レナートは手紙をテーブルに置くと、柔和な表情を引き締め、探るような鋭い瞳をリーゼに向けた。
「さて、リーゼ嬢。あいつが私への説明を省いて無鉄砲に飛び出すなど、よほどの事態だ。何があったか、詳しく聞かせてくれるか?」
促され、リーゼはこくりとうなずく。
「はい。……まずは、私の出生について、お話しなければなりません」
リーゼは意を決して語った。
自身は、カスパル・トゥクル辺境伯を死に至らしめた暁の反乱軍首領、ヨハン・ノイエルの娘であること。
アルブレヒトに弟のリヒトを人質に取られ、夫の動向をスパイしていたが、命令に逆らったため、リヒトの身に危険が及ぶ可能性があること──。