最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
「でも……、リーゼ・ヴァルディエの顔を知る使用人は、私が屋敷に連れてこられる少し前に解雇されたのです。でしたら、亡くなったのは、そのころ……。亡くなってから身代わりを探したにしては、あまりにも計画的ではありませんか?」

 レナートはうっすらと笑みを浮かべた。

 それは何かを楽しむようであり、冷ややかなものでもあり、思わずリーゼは身震いする身体を抱きしめた。

「ちょうどいい手頃な身代わりを見つけた。これがまず、最初だったのではないか?」
「……それは、どういう?」
「あなたを見つけたときから計画は始まった。本物のリーゼの死は、引き金を引く合図だ」
「でもだからって、どうして私が……」
「つまりだ、ふとしたときに偽の名を呼ばれ、自然と振り向く幼い子どもは少ない。その名を持って育った子どもを偽物に仕立てる方が、入れ替わりを疑われにくいだろう」

 レナートは立ち上がるとリーゼに歩み寄り、じろじろと眺めた。

「その上、あなたは私が知る中でも、なかなかに美しい。それは、公爵令嬢として疑う余地のない美貌の持ち主だということだ。……あなたには酷な話かもしれないが、あなたを奪うために、ヨハンは反乱軍の首領に仕立て上げられたのだ」
「そんな……っ」

 リーゼは息を呑んだ。
 自分が身代わりだとはわかっていた。けれど、そのために父が……、家族が犠牲になったなんて考えたこともなかった。

「私の……せいで、両親は殺されたっていうんですかっ。でも、なぜ? それなら、トゥクル辺境伯はなぜ、殺されなければならなかったのですかっ?」
「本当に、トゥクルは死んだのか?」
「え……」
< 69 / 95 >

この作品をシェア

pagetop