最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
 考えたこともなかった問いに衝撃を受けた。

 リーゼはひるむようにつばを飲み込んだ。
 レナートは想像し得ない何かを知っている。そう思えてならない。

「私は一つ、大きな仮説を立てている。聞きたいか?」
「……はい。聞かせてください」
「いいだろう。……だが、その前に」

 深刻な話の腰を折るように、レナートが視線を少し下にずらす。

「その鳥は、ずいぶんリーゼ嬢に懐いているのだな」
「……フィンですか?」

 リーゼの腕の中で、気配を消すように大人しくしていたフィンが、名を呼ばれてまばたきをする。

「ああ。シルヴィオは見つけられなかったと私に報告したが、まさかリーゼ嬢のもとにいたとはな」
「見つけられないって……。それでは、もしかして……」
「異国から取り寄せた鳥が荷から逃げ出したのを、シルヴィオに探すよう頼んだのは、私だ」

 リーゼの心臓が、ドクンと大きく跳ねた。

 鳥を探していると中庭に現れた、フードを目深にかぶった少年が脳裏をよぎる。

(じゃあ、あの少年がシルヴィオ様……?)

 リーゼは胸が熱くなるのを感じた。

 あのとき、あの少年が見逃してくれたから、リーゼは心を預けられる親友ができた。フィンがいてくれたからさみしくなかった毎日は、シルヴィオが与えてくれたものだったのだ。

「大切に飼われていたようで何よりだ。……さあ、本題に入ろうか」

 レナートはふたたび、執務机に腰を落ち着けると、低く声を潜めた。

「ヴァルディエ公爵について、私は以前からある疑いを持っている」
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