最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
男の一人がニヤニヤしながら、フードの中をのぞき込んだ途端、言葉を詰まらせた。鋭い青の瞳が、ただならない気迫に満ちていたからだろう。
「その、リヒトという少年、どこへ行った?」
シルヴィオがテーブルに腕を乗せて前のめりになると、男は「ヒッ……!」と巨躯を震わせて、窓の方を指差した。
「あ、あっちの……、北の岩山だ。私兵たちが追っていくのを見たんだ」
「そうか。感謝する」
シルヴィオは銀貨を一枚、指で弾いて男のテーブルに飛ばすと席を立つ。
銀貨に飛びつく男たちを尻目に、シルヴィオは再び極寒の外へと飛び出した。
(……リヒト、生きていてくれよ)
シルヴィオは厩舎まで戻ると、愛馬に飛び乗り、すぐさま北の山へと向かった。
白煙を巻き上げながら駆けていく。降り積もった雪が次第に深くなり、愛馬が前足をあげ、躊躇する。
「これ以上は無理か……」
シルヴィオは愛馬を降りて進んだ。足元は最悪だったが、好都合なことが一つだけあった。
複数の足跡が、新雪を蹴散らし、岩山へ向かって続いていたのだ。
(十人……といったところか)
大きさの違う足跡がいくつか見える。しかし、どれも大人のものとは違う。
これが、リヒトたちの足跡だとすれば、エルラント解放軍というのは、比較的若い少年たちの集まりかもしれない。
シルヴィオは険しい岩場を駆け上がった。肺が凍りつくような寒さも、死地に比べれば、大したことはなかった。
「足跡が、消えたか……」
雪が不自然に取り払われた岩肌の先に、足跡は見当たらない。用心深く神経を張り詰めたとき、頭上に気配を感じた。
「その、リヒトという少年、どこへ行った?」
シルヴィオがテーブルに腕を乗せて前のめりになると、男は「ヒッ……!」と巨躯を震わせて、窓の方を指差した。
「あ、あっちの……、北の岩山だ。私兵たちが追っていくのを見たんだ」
「そうか。感謝する」
シルヴィオは銀貨を一枚、指で弾いて男のテーブルに飛ばすと席を立つ。
銀貨に飛びつく男たちを尻目に、シルヴィオは再び極寒の外へと飛び出した。
(……リヒト、生きていてくれよ)
シルヴィオは厩舎まで戻ると、愛馬に飛び乗り、すぐさま北の山へと向かった。
白煙を巻き上げながら駆けていく。降り積もった雪が次第に深くなり、愛馬が前足をあげ、躊躇する。
「これ以上は無理か……」
シルヴィオは愛馬を降りて進んだ。足元は最悪だったが、好都合なことが一つだけあった。
複数の足跡が、新雪を蹴散らし、岩山へ向かって続いていたのだ。
(十人……といったところか)
大きさの違う足跡がいくつか見える。しかし、どれも大人のものとは違う。
これが、リヒトたちの足跡だとすれば、エルラント解放軍というのは、比較的若い少年たちの集まりかもしれない。
シルヴィオは険しい岩場を駆け上がった。肺が凍りつくような寒さも、死地に比べれば、大したことはなかった。
「足跡が、消えたか……」
雪が不自然に取り払われた岩肌の先に、足跡は見当たらない。用心深く神経を張り詰めたとき、頭上に気配を感じた。