最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
 リヒトは首筋をぬぐった。
 細い傷が真横に伸びている。ペンダントを引きちぎられたときについたものだろうか。

「ヴァルディエ公爵か」
「俺のこと知ってるなら、エルラントで何があったかも知ってるだろ?」
「……そうだな。アジトは近くか? その、怪我をした仲間とやらを見せてくれ」
「見てどうするんだっ」
「怪我次第では町へ運ぶ」
「それはできねぇ! そんなことしたら、町のやつらが公爵に知らせて俺たちは捕まっちまう」
「だからって、仲間を見殺しにはできんだろう。とにかく、案内しろ。多少の傷薬は持っている」

 腰につけた袋を見せると、リヒトは渋々立ち上がった。

「みんなっ、出てこい! この人は敵じゃないっ」

 リヒトが声を上げると、岩陰からゾロゾロと少年たちが姿を見せる。やはり、誰もが、リヒトと同じくらいの年頃の少年だった。

「彼らは?」
「……俺と一緒に捕まってたエルラントの人間だよ」
「全員エルラントから逃げてきたのか?」

 尋ねると、プライドをひどく傷つけられたような表情で、リヒトは叫んだ。

「逃げたんじゃねぇ! 俺たちはみんな、両親を殺されたっ! 俺を育ててくれたじいちゃんが、姉さんを頼ってエルラントを救えって、俺たちに武器をくれたんだ」
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