最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
本物のリーゼ・ヴァルディエでないことが、知られたのだろうか。
部屋から出られても、まだ助かったとは言い切れない。手のひらにじわりと浮かぶ嫌な汗を握りしめると、アルブレヒトが鼻を鳴らす。
「……レナートの言い分ばかりに耳を傾ける愚王めがっ」
そのまま彼は鎖を床に叩きつけると、そわそわと取り囲むメイドたちを蹴散らすようにして階段を降りていく。
リーゼもフィンを抱えたまま、アルブレヒトのあとを追った。階段を上がってくるシルヴィオの姿が見えたからだ。
「リーゼッ!」
階段の中ほどで、アルブレヒトとシルヴィオがすれ違う。
アルブレヒトは忌々しげに舌打ちをしたが、シルヴィオは一瞥もくれず、真っ直ぐにリーゼの元へと駆け寄ってきた。
「シルヴィオ様っ!」
リーゼが腕を伸ばすと、フィンは飛び立ち、シルヴィオの肩に乗る。そのまま彼女は長い腕に抱きすくめられた。
「……こんなに冷えて」
「シルヴィオ様こそ」
凍りそうなほど冷たい胸当ての感触に胸が痛む。暖のない部屋で過ごすことなんてささいなことだ。
リーゼは必死に彼のぬくもりを探そうと、背中に手を回して抱きしめ返す。
「ご無事で……」
「当たり前だ。信じて待てと言っただろう」
「でも……」
うっすらと涙の浮かぶリーゼの目尻を、シルヴィオは親指でこすると、柔らかに微笑んだ。
「泣くな。……リーゼに会わせたい男がいるんだ」
「……会わせたいって、もしかして」
(リヒト?)
リーゼがまばたきをすると、彼は力強くうなずいた。
「すぐに会わせてやりたいが、その前に王城へ向かおう。騎士団を動かしたのだ。陛下に真実をすべて、包み隠さずお話しなければならない」
部屋から出られても、まだ助かったとは言い切れない。手のひらにじわりと浮かぶ嫌な汗を握りしめると、アルブレヒトが鼻を鳴らす。
「……レナートの言い分ばかりに耳を傾ける愚王めがっ」
そのまま彼は鎖を床に叩きつけると、そわそわと取り囲むメイドたちを蹴散らすようにして階段を降りていく。
リーゼもフィンを抱えたまま、アルブレヒトのあとを追った。階段を上がってくるシルヴィオの姿が見えたからだ。
「リーゼッ!」
階段の中ほどで、アルブレヒトとシルヴィオがすれ違う。
アルブレヒトは忌々しげに舌打ちをしたが、シルヴィオは一瞥もくれず、真っ直ぐにリーゼの元へと駆け寄ってきた。
「シルヴィオ様っ!」
リーゼが腕を伸ばすと、フィンは飛び立ち、シルヴィオの肩に乗る。そのまま彼女は長い腕に抱きすくめられた。
「……こんなに冷えて」
「シルヴィオ様こそ」
凍りそうなほど冷たい胸当ての感触に胸が痛む。暖のない部屋で過ごすことなんてささいなことだ。
リーゼは必死に彼のぬくもりを探そうと、背中に手を回して抱きしめ返す。
「ご無事で……」
「当たり前だ。信じて待てと言っただろう」
「でも……」
うっすらと涙の浮かぶリーゼの目尻を、シルヴィオは親指でこすると、柔らかに微笑んだ。
「泣くな。……リーゼに会わせたい男がいるんだ」
「……会わせたいって、もしかして」
(リヒト?)
リーゼがまばたきをすると、彼は力強くうなずいた。
「すぐに会わせてやりたいが、その前に王城へ向かおう。騎士団を動かしたのだ。陛下に真実をすべて、包み隠さずお話しなければならない」