最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
***


 ラグローリアでもっとも豪華絢爛たる王城の奥深く、会議の間に集められたのは、アルブレヒト・ヴァルディエに、シルヴィオ・ヴァイス、その夫人リーゼだった。

 そして、豪奢なシャンデリアの下、長テーブルの上座には、マリウス・フォン・ラグローリア国王陛下が静かに腰を下ろし、その両隣には、宰相のマシュー・ブライと、レナート・ブラッツが控えていた。

「揃ったようですね」

 若く澄んだ少年の声が、室内によく響く。

 まだ十八歳のマリウスは、爽やかな風貌に、気品のある佇まいを見せていた。しかし、その穏やかな語り口に反し、場の乱れを許さない風格を備えていた。

 リーゼは緊張で押しつぶされそうになりながら、臣下の礼をとるシルヴィオに続き、深く頭を下げた。

「陛下、このような騒ぎとなり、まことに申し訳ございません。騎士団の多くはエルラントへ向かいました」
「かまいません。ノマールで不穏な動きがあると聞き、騎士団自らが結集したのです。出兵の許可は私の判断です。……そこで、ヴァルディエ」

 マリウスが流し目でアルブレヒトを見る。

「エルラントで反乱軍の動きありとの情報は、本当ですか?」
「はい。以前より、暁の反乱を起こしたヨハン・ノイエルの息子、リヒト・ノイエルを中心とした農民たちが、エルラントを解放すると、馬鹿げた思想を掲げ、我が兵士たちを襲撃しております。すでに武器を手に取っており、放置すれば、王国の秩序を脅かす事態になりましょう」

 マリウスは玉座の肘掛けに指先を置いたまま、アルブレヒトから視線を外さなかった。そして、スッと冷めたような目をして、穏やかに問う。

「なぜ、すぐに報告をしなかったのです?」

 アルブレヒトはあわてる様子なく、口もとをわずかに緩めた。まるで、その言葉を待っていたかのようだった。

「泳がせていたのですよ。リヒト・ノイエルはいまだ、15歳の少年。先導する者が必ずいるはず。その者が誰か……、証拠をつかみ次第、陛下にご報告申し上げるつもりでした」
「本当ですね?」
< 85 / 95 >

この作品をシェア

pagetop