最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
「ええ。統治には何ら落ち度はございません。すでに、農民どもは拘束済み。王国騎士団の到着を待つ必要もございません」
「……信じます。しかし、ブラッツの話では、リヒト・ノイエルは王都に向かっているとのこと。王都で騒ぎを起こせば、ヴァルディエ、あなたの責任が問われますよ」
「ご安心ください、陛下。先導者はわかっています」

 アルブレヒトは高らかに声を上げ、厳しい表情で見守るマリウスに対し、雄弁に続けた。

「先ほども申し上げました。リヒトはまだ少年。やつをそそのかし、反乱を企てる男がおります」
「目星がついているのですね?」
「ええ。単刀直入に申し上げます」

 アルブレヒトは腕を持ち上げると、振り向きざまにその指先をひとりの男へと向けた。

「シルヴィオ・ヴァイス! この男こそが、国を揺るがす反逆者。暁の反乱軍を利用し、我がヴァルディエ家を乗っ取ろうとするばかりか、ブラッツとも協力し、あわよくば王座を手に入れようと企てているのですっ!」

 マリウスはぴくりとも表情を変えず、シルヴィオを見つめたあと、レナートへと目を移す。

 シルヴィオもレナートも、眉ひとつ動かさず、ただじっとマリウスの言葉を待っている。

「……ヴァルディエ、そこまで言うなら、証拠はありますよね?」
「ございますとも! この男は、騎士団長の地位を利用し、反乱軍の娘であるリーゼ・ノイエルを妻に迎えたのです!」

 アルブレヒトの言葉に、リーゼは息を呑んだ。ノイエルであることを、この場で暴露されるとは思ってもなかった。

「リーゼ・ノイエル……? あなたの娘ではないのですか?」
「いえ、違います! こやつは公爵家の娘になりすまし、ヴァイスと婚姻を結びました。すべては、エルラントを統治するヴァルディエ家を逆恨みし、ヴァイスやブラッツとともに王家を乗っ取るため!」

 アルブレヒトは芝居がかった口調で嘆いてみせる。
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