最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
「私は娘を人質に取られ、脅されていたのです。しかし、これ以上、彼らの悪行を見過ごすわけにはいきません。……この男が、反乱軍の首謀者である何よりの証拠が、そこにあります!」

 突き刺すような眼差しでアルブレヒトが見つめるのは、シルヴィオの胸元だった。

「その首飾りです、陛下!」
「……首飾り?」
「はい。シルヴィオが肌身離さず持っているその宝石の中には、反乱軍の紋章が刻まれているのです!」

 マリウスの視線が、シルヴィオの胸元へ向けられる。そこで静かに輝くのは、ブルーサファイアの首飾りだった。

 シルヴィオは表情を変えず、ただ静かにアルブレヒトを見据えていた。

「ヴァイス。……申し開きはありますか?」

 マリウスに問われたシルヴィオは、ゆっくりと首を横に振った。

「……いいえ、ございません」
「ならば、その首飾りを見せなさい」

 マリウスの命令に、シルヴィオがためらうように胸元に手をやる。
 その隙を見逃さず、アルブレヒトが飛びかかった。

「往生際が悪いぞ!」

 ブチッ、と荒々しい音がして、銀の鎖がひきちぎられる。

「あっ……!」

 リーゼは悲鳴を上げた。
 アルブレヒトの手には、無残にもぎ取られたブルーサファイアが握られていた。

『これを外すときは、あなたが俺を失うときだ』

 シルヴィオの言葉が、呪いのようにリーゼの脳裏をよぎり、血の気が引いていく。

 さらにアルブレヒトは、それを地面に叩きつけると、革靴のかかとで踏み砕いた。
 ブルーサファイアを支える爪が外れ、銀の土台に刻まれた模様があらわになる。

「ご覧ください、陛下! これこそが動かぬ証拠ですぞ!」

 アルブレヒトは勝ち誇ったように、土台を陛下の目の前で掲げた。

 シャンデリアの光に反射して浮かび上がるのは、太陽を模した禍々しい模様──反乱軍の証、暁の紋章だった。
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