最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
「ヴァルディエ公爵夫人も不審な死を遂げています。……あなたは、リーゼ・ヴァルディエが亡くなったのを好機と捉え、以前から進めていた計画を実行に移した。公爵になりすまし、リーゼを利用して、王家に取り入ろうとしたのは、あなたでしょう」
「黙れ、黙れっ! 平民上がりが私に指図するな!」
「私は、第一王国騎士団長として、そしてリーゼの夫として尋ねています。なぜ、辺境伯という地位がありながら、あのような暴挙に出たのですか」
「うるさいっ!!」

 アルブレヒトは、発狂したように叫んだ。

「兄さえいなければ、私が正当な公爵家の後継だったのだ! 私は、本来私のものになるはずだったすべてのものを取り戻したにすぎない! それの何が悪い!」

 まごうことなき自白に、室内はシンと静まり返る。

「……聞きましたね、マシュー」

 マリウスが厳しい声で告げると、マシューは深く頭を下げ、近衛兵たちに合図を送った。

「カスパル・トゥクルを拘束せよ!」
「なっ、放せ! 私は公爵だぞ! 無礼者っ!」

 わめき散らすアルブレヒト──いや、カスパルは、数人の兵士に羽交い締めにされ、扉の奥へと連れていかれた。

 静寂が戻ると、マリウスは小さくため息をつき、リーゼへと歩み寄る。

「リーゼ・ノイエル」
「は、はい……」
「あなたの父、ヨハン・ノイエルの汚名は、これから真実が明るみになり、徐々に晴れていくでしょう。……苦労をかけましたね」

 マリウスの言葉に、リーゼの目から涙がこぼれ落ちる。

 王都へ連れてこられた日から始まった、長い長い悪夢がようやく終わるのだ。

「今回の件が落ち着いたら、望みを一つ叶えよう。それで、あなたの両親が戻るわけではないが……」
「もったいないお言葉です。私は……」

 リーゼは涙をぬぐうと、隣に立つシルヴィオを見上げ、その優しい眼差しに勇気をもらいながら、リヒトへと目を移す。

「私は、家族とともに、もう一度、エルラントの地に行きたいです」
「それだけか」
「……はい。ずっと願っていたことですから」
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