最強の騎士団長に嫁いだ偽りの公爵令嬢は、溺愛から逃げられない
「リーゼのぬくもりのない夜には、一刻たりとも耐えられん」

 シルヴィオはわずかに目もとを赤らめると、リーゼの腰を抱き寄せ、背中のひもをあっさりとほどいた。

「ま、待ってください……。まだお話が……」
「ベッドの中で聞こう」

 あっという間に手際よくドレスを脱がされ、リーゼはベッドの上へと押し倒された。

 すぐさまかぶさってくるシルヴィオの胸板は厚く、指先で触れると、やけどしそうなほどに熱く感じられる。

「シルヴィオ様……」

 首筋に口づけを落としてくる彼の胸もとをするりとなでる。どれほどまさぐるように探しても、どんなときも外さなかった、あの首飾りがない。

 当然だ。あれは、壊されてしまった。

 リーゼが選んだ首飾りはまがいもので、シルヴィオを助けるどころか、罠にはめてしまうものでしかなかった。

 失われたならそれでいい。そのはずなのに、あのときに感じた、シルヴィオを助けたいと願った感情さえも嘘で、報われない愛だったのではないかと悲しくなる。

「リーゼ……、何を泣く?」
「首飾り……、大切にしてくださっていたのに……」
「ああ……」

 シルヴィオも首筋をなでると、リーゼの背中の下に腕を差し込み、長い髪ごと抱きすくめる。

「気にするな」
「でも……、シルヴィオ様は言いました。首飾りを外すときは、私があなたを失う日だって」

 黙っているシルヴィオに不安を抱いて、リーゼは彼を抱きしめ返しながら、肩に鼻先を埋める。

「あのときの言葉通り、私はあなたを失ったのです。こうして抱きしめられていていいのは、私ではありません。あなたにはあなたの、ふさわしい結婚が……」
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