I 編む
そんなことはない、と聡はきっぱり告げる。本心からだと、まっすぐな瞳が語っている。
どうして、と思う。どうして下心でもなく、彼はこんなにもこちらに公正に接してくれるのか。
だからつい色々と話してしまう。
「———大変なことも多いですけど、でもD &Iに関わっているおかげで色々学べました。障害を持っている方と接していて、逆にすごいなと感じることもあるんです」
聡がうながす視線を向けてくる。
「五感のうちの一つが不自由だと、逆に他の感覚がすごく研ぎ澄まされるんですよね。点字って、わたしにはただのぷつぷつでしかないんですけど、それを指先で読み取れるのってマジック見てるみたいで。
唇の動きを読んでこちらの言っていることを完璧に理解できるのも、神業ですよ」
人間って案外バケモノだなと、それは同情などではなく、明日美が二人と接するなかで気づかされたことだった。
「だから二人とも、情報収集力がものすごいんです。陽太さんは視覚が不自由な分、聴覚が敏感だから地獄耳ですし、梢さんは会話が聞こえない距離でも唇が読めるから何を話してるか分かっちゃうんです」
「うかつに人の悪口言えないですね」
ほんと、とうなずく。
どうして、と思う。どうして下心でもなく、彼はこんなにもこちらに公正に接してくれるのか。
だからつい色々と話してしまう。
「———大変なことも多いですけど、でもD &Iに関わっているおかげで色々学べました。障害を持っている方と接していて、逆にすごいなと感じることもあるんです」
聡がうながす視線を向けてくる。
「五感のうちの一つが不自由だと、逆に他の感覚がすごく研ぎ澄まされるんですよね。点字って、わたしにはただのぷつぷつでしかないんですけど、それを指先で読み取れるのってマジック見てるみたいで。
唇の動きを読んでこちらの言っていることを完璧に理解できるのも、神業ですよ」
人間って案外バケモノだなと、それは同情などではなく、明日美が二人と接するなかで気づかされたことだった。
「だから二人とも、情報収集力がものすごいんです。陽太さんは視覚が不自由な分、聴覚が敏感だから地獄耳ですし、梢さんは会話が聞こえない距離でも唇が読めるから何を話してるか分かっちゃうんです」
「うかつに人の悪口言えないですね」
ほんと、とうなずく。