転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
第2話:リシャール夫婦の事情
「旦那様……! お初にお目にかかります。メディス侯爵家から参りました、クリスティーヌと申します」
立ち上がったクリスティーヌが震える声で挨拶を述べ、深く頭を下げる。
その光景にセレスティアは驚いた。
夫婦なのに、まさか初対面だとは思いもしなかったのだ。
「アルフレッド・リシャールだ。よく来てくれた。歓迎する」
そう言いつつも、アルフレッドの話し方は淡々としており、歓迎している様子はあまり感じられない。それどころか、妻へ向けられる眼差しはどことなく冷ややかで、クリスティーヌは青ざめ、すっかり萎縮してしまっているようだった。
(お父様! 笑顔! 笑顔だよ!)
セレスティアは必死にアドバイスするが、目の前に広がるのは過去の光景。
どんなに心の中で叫んでも、残念ながら変わることはない。
「すでに家令から聞いていると思うが、屋敷内では自由に過ごしてくれて構わない。なにか必要なものや要望があれば、気兼ねなく使用人に申しつけてくれ。──ただし、常識の範囲内で、だが」
アルフレッドの切れ長の目がすっと細められ、威圧するような冷光を帯びる。
睨み付けられたクリスティーヌがびくりと肩を跳ねさせたが、彼は気遣うことなく話しつづけた。
「この結婚はスチュアート殿下が仲立ちしてくださったものだ。ゆえに、君には最大限のもてなしを約束しよう。だが、我が家の家名に傷をつけるような行いをした場合は別だ。たとえ妻であっても、手心を加えるつもりはない。当主として厳正に対応するため、ゆめゆめ公爵夫人としての品位を忘れぬように」
「かしこまりました……」
家臣のように頭を垂れて返事をしたクリスティーヌに、アルフレッドは軽く頷き背を向けた。
「あ、あの、旦那様、どちらへ……?」
「仕事があるため書斎に行く。念のため言っておくが、共寝は不要だ。公の場でリシャール公爵夫人の名に恥じない行動をしてくれれば、君には他になにも望まない」
話は終わりとばかりにアルフレッドは口を閉ざし、クリスティーヌの返事も聞かぬまま部屋を出ていった。
扉が閉ざされ、室内は真夜中の静寂に包まれる。
緊張から解き放たれたクリスティーヌは、糸の切れた操り人形のようにベッドへと崩れ落ち、力なく項垂れた。
「私はここでも、必要とされないのね……」
悲しげな囁きがセレスティアの耳に届いた次の瞬間、まぶたの裏に映し出されていた光景がかき消え、視界が暗闇に包まれる。
セレスティアはゆっくりと目を開け、そして開口一番──。
「おとうしゃま、サイテイ。くじゅおとこ」
ジト目で思ったことを呟いた。
立ち上がったクリスティーヌが震える声で挨拶を述べ、深く頭を下げる。
その光景にセレスティアは驚いた。
夫婦なのに、まさか初対面だとは思いもしなかったのだ。
「アルフレッド・リシャールだ。よく来てくれた。歓迎する」
そう言いつつも、アルフレッドの話し方は淡々としており、歓迎している様子はあまり感じられない。それどころか、妻へ向けられる眼差しはどことなく冷ややかで、クリスティーヌは青ざめ、すっかり萎縮してしまっているようだった。
(お父様! 笑顔! 笑顔だよ!)
セレスティアは必死にアドバイスするが、目の前に広がるのは過去の光景。
どんなに心の中で叫んでも、残念ながら変わることはない。
「すでに家令から聞いていると思うが、屋敷内では自由に過ごしてくれて構わない。なにか必要なものや要望があれば、気兼ねなく使用人に申しつけてくれ。──ただし、常識の範囲内で、だが」
アルフレッドの切れ長の目がすっと細められ、威圧するような冷光を帯びる。
睨み付けられたクリスティーヌがびくりと肩を跳ねさせたが、彼は気遣うことなく話しつづけた。
「この結婚はスチュアート殿下が仲立ちしてくださったものだ。ゆえに、君には最大限のもてなしを約束しよう。だが、我が家の家名に傷をつけるような行いをした場合は別だ。たとえ妻であっても、手心を加えるつもりはない。当主として厳正に対応するため、ゆめゆめ公爵夫人としての品位を忘れぬように」
「かしこまりました……」
家臣のように頭を垂れて返事をしたクリスティーヌに、アルフレッドは軽く頷き背を向けた。
「あ、あの、旦那様、どちらへ……?」
「仕事があるため書斎に行く。念のため言っておくが、共寝は不要だ。公の場でリシャール公爵夫人の名に恥じない行動をしてくれれば、君には他になにも望まない」
話は終わりとばかりにアルフレッドは口を閉ざし、クリスティーヌの返事も聞かぬまま部屋を出ていった。
扉が閉ざされ、室内は真夜中の静寂に包まれる。
緊張から解き放たれたクリスティーヌは、糸の切れた操り人形のようにベッドへと崩れ落ち、力なく項垂れた。
「私はここでも、必要とされないのね……」
悲しげな囁きがセレスティアの耳に届いた次の瞬間、まぶたの裏に映し出されていた光景がかき消え、視界が暗闇に包まれる。
セレスティアはゆっくりと目を開け、そして開口一番──。
「おとうしゃま、サイテイ。くじゅおとこ」
ジト目で思ったことを呟いた。