転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
『邪悪な術を使う異端者どもめ!』
『貴様らは全員死罪である。──ひとり残らず、殺せ!』
突如として、鎧をまとった兵士の大軍が集落になだれ込んできたのだ。
村には火矢が放たれ、少女が祖母とともに家を飛び出した時には、辺り一面が業火に包まれていた。
武装した兵士らは逃げ惑う人々を手当たり次第に襲い、その命を容赦なく狩り取っていく。
ついに兵士のひとりが少女に狙いを定め、勢いよく剣を振りかぶった。
『おのれ、忌まわしい魔女め!』
鋭利な刃が燃え盛る炎に照らされギラリと光る。
剣が振り下ろされた瞬間、セレスティアはハッと目を覚ました。
はぁはぁと小さな胸を上下させて荒い息をつくセレスティアの顔を、エプロンドレスを着た四十代ほどの優しげな女性──乳母のポーラが心配そうな面持ちで覗き込んでくる。
「お嬢様! あぁ……お目覚めになってよかった……」
「……ぽーら? ここ……」
「ここは、お嬢様のお部屋ですよ」
ああ、そうだ。母に会いたい一心で駆け出し、転んで意識を失っていたのだと、セレスティアは思い出した。
(お母様には、もう会えないのね……)
十三年間分の記憶と知識を得てしまった今のセレスティアは、実母がこの世にいないことを正しく理解してしまっていた。
寂しさがこみ上げ唇をきゅっと噛みしめれば、ポーラがいっそう気遣わしげな顔をした。
「お医者様は、特に大きな怪我もなく、眠っているだけだとおっしゃっていましたが……。どこか痛むところはございますか?」
「んーん、だいじょぶ! ありがと、ぽーら!」
セレスティアは笑顔を浮かべ、一生懸命に返事をした。
三歳児の身体は思った以上に動かしにくく、どうしても舌足らずな発音になってしまう。少し会話をするだけでも大変だ。
なおも心配そうな顔をするポーラを安心させようと、セレスティアはベッドの上で上半身を起こした。
そして元気だとアピールするべく両手を上げたり、シュッシュッとパンチをするような仕草をしたりしてみせる。
すると、お腹が「きゅるぅ~。くりゅりゅりゅ~ん」と、なんとも間抜けな音を奏ではじめた。
「ぁ……あぅ……」
みぞおちを押えて『お願い、止まってぇ……!』と祈るものの、腹の虫は鳴き止まない。
それどころか、ますますうるさくなっていく。
えぇ、どれだけ腹ぺこなのさ。この食いしん坊めっ!と、セレスティアは自分のお腹にツッコミを入れたくなった。
「あらあら、ふふふっ。食欲があるのはいいことですね。起きたばかりですので、消化にいいものを持ってまいりますね」
安堵の微笑を浮かべたポーラがベッドサイドの椅子から立ち上がり、部屋を出ていった。
足音が遠ざかっていくのを聞き届けたセレスティアは、左手で目元を覆い、心の中で前世の祖母から教わった呪文を唱えはじめる。
──〝我らの隣人、≪緑の民≫の古き友らよ。
この世を隔てるくさびをほどき、汝らの姿をこの目に映せ〟
その瞬間、神経が一気に通ったような、ツンとした痛みが目の裏を駆け抜けた。
しかし苦痛を感じたのはほんの一瞬で、すぐに幻のように引いていく。
目隠しを取り払ったセレスティアの視界には、まさに別世界のような光景が広がっていた。
『貴様らは全員死罪である。──ひとり残らず、殺せ!』
突如として、鎧をまとった兵士の大軍が集落になだれ込んできたのだ。
村には火矢が放たれ、少女が祖母とともに家を飛び出した時には、辺り一面が業火に包まれていた。
武装した兵士らは逃げ惑う人々を手当たり次第に襲い、その命を容赦なく狩り取っていく。
ついに兵士のひとりが少女に狙いを定め、勢いよく剣を振りかぶった。
『おのれ、忌まわしい魔女め!』
鋭利な刃が燃え盛る炎に照らされギラリと光る。
剣が振り下ろされた瞬間、セレスティアはハッと目を覚ました。
はぁはぁと小さな胸を上下させて荒い息をつくセレスティアの顔を、エプロンドレスを着た四十代ほどの優しげな女性──乳母のポーラが心配そうな面持ちで覗き込んでくる。
「お嬢様! あぁ……お目覚めになってよかった……」
「……ぽーら? ここ……」
「ここは、お嬢様のお部屋ですよ」
ああ、そうだ。母に会いたい一心で駆け出し、転んで意識を失っていたのだと、セレスティアは思い出した。
(お母様には、もう会えないのね……)
十三年間分の記憶と知識を得てしまった今のセレスティアは、実母がこの世にいないことを正しく理解してしまっていた。
寂しさがこみ上げ唇をきゅっと噛みしめれば、ポーラがいっそう気遣わしげな顔をした。
「お医者様は、特に大きな怪我もなく、眠っているだけだとおっしゃっていましたが……。どこか痛むところはございますか?」
「んーん、だいじょぶ! ありがと、ぽーら!」
セレスティアは笑顔を浮かべ、一生懸命に返事をした。
三歳児の身体は思った以上に動かしにくく、どうしても舌足らずな発音になってしまう。少し会話をするだけでも大変だ。
なおも心配そうな顔をするポーラを安心させようと、セレスティアはベッドの上で上半身を起こした。
そして元気だとアピールするべく両手を上げたり、シュッシュッとパンチをするような仕草をしたりしてみせる。
すると、お腹が「きゅるぅ~。くりゅりゅりゅ~ん」と、なんとも間抜けな音を奏ではじめた。
「ぁ……あぅ……」
みぞおちを押えて『お願い、止まってぇ……!』と祈るものの、腹の虫は鳴き止まない。
それどころか、ますますうるさくなっていく。
えぇ、どれだけ腹ぺこなのさ。この食いしん坊めっ!と、セレスティアは自分のお腹にツッコミを入れたくなった。
「あらあら、ふふふっ。食欲があるのはいいことですね。起きたばかりですので、消化にいいものを持ってまいりますね」
安堵の微笑を浮かべたポーラがベッドサイドの椅子から立ち上がり、部屋を出ていった。
足音が遠ざかっていくのを聞き届けたセレスティアは、左手で目元を覆い、心の中で前世の祖母から教わった呪文を唱えはじめる。
──〝我らの隣人、≪緑の民≫の古き友らよ。
この世を隔てるくさびをほどき、汝らの姿をこの目に映せ〟
その瞬間、神経が一気に通ったような、ツンとした痛みが目の裏を駆け抜けた。
しかし苦痛を感じたのはほんの一瞬で、すぐに幻のように引いていく。
目隠しを取り払ったセレスティアの視界には、まさに別世界のような光景が広がっていた。