転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜

第2話:いのち短し、人生を謳歌せよ

 薄く開いた窓から吹き込む風に乗り、手のひらほどの背丈の女性たちが部屋の中をたゆたうように舞っている。

 背にある半透明の羽がはばたくたび、星屑(ほしくず)のような鱗粉(りんぷん)がキラキラと散り、空気に溶けて消えていく──。

 きゃらきゃらと笑いながら飛び回る彼女らは、風の精〝シルフ〟。
 木の(こずえ)住処(すみか)とする妖精なので、おそらく屋敷の裏手に広がる森から来たのだろう。

 そこから下へと視線を移すと、日当たりのよいテーブルの上では三角帽子をかぶった親指サイズの小さなおじいちゃんが三人。身を寄せ合ってうたた寝していた。

 赤茶色の豊かな顎髭(あごひげ)をたくわえた彼らは、家に住み着く〝ブラウニー〟という小人(こびと)だ。
 昼下がりのうららかな陽気に誘われ、こくりこくりと舟をこぐ姿がなんとも愛らしい。
 
 目の前にいる人ならざる者たちは、古来よりこのグランフェリシア王国に住まう〝妖精〟。
 彼らは人間が入植する(はる)か昔からこの地に根を張っていた、いわゆる先住民族とも言える存在である。

 しかし人間たちが王国を築き、武器を作り、国内外で争いを起すようになるにつれ、迫害を恐れた妖精たちは魔法で姿を隠すようになっていった。

 そんな妖精たちを認識する(すべ)を持っていたのが《緑の民》。

 初代の民長は妖精たちとの共存を望み、決して彼らを傷つけないと妖精王に魂の誓いを立てた。
 その覚悟と信念が認められ、人ならざる者たちと交流する呪文と知恵を特別に授けられたのだ。

(ありゃ、本当に《緑の民》の呪文が使えちゃった……)

 ということは、あれはただの夢ではなく、セレスティアとして生まれる前の経験──いわゆる前世の記憶というやつなのだろうか。

 そんなことをぼんやり考えていると、床から小さな足音が聞こえ、次いで白い毛玉がぴょんとベッドに飛び乗ってきた。

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