【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
輝石はその名の通り淡い光を放ち、普通の石にはない特殊な効力を発揮する鉱石である。
例えば赤色に輝く〝火鉱石〟は、振動や衝撃を受けると発熱する性質を持ち、繊維に織り込んで防寒具などに利用されている。
他にも、灰色の〝遮熱石〟は高い断熱効果を誇り、水色にきらめく〝冷鉱石〟は空気に触れると冷たくなるため、夏の暑さをやわらげる冷感素材として国内外で重宝されている。
こうした多様な輝石の加工・輸出と、安定した税徴収によって、リシャール公爵家は国内でも屈指の豊かさを誇る名家となった。
その巨万の富を背景に、古くから王宮へ令嬢令息を送り込み、数多の王妃や側妃、宮廷高官を輩出。そうして徐々に王室との繋がりを深めていき、数代前からは国王陛下や王太子の相談役も任されるようになったのである。
アルフレッドもまた歴代当主の例に漏れず、二十歳で当主になってから約六年。
リシャール公爵として領地を治めるかたわら、王族の公務を補佐する政務府長として王宮勤めもこなしている。
今でこそ激務にも慣れたが、家督を継いだばかりの頃は常に仕事に追われる日々だった。
さらに五年前にはグランフェリシア王国内で大規模な災害と飢饉が発生し、その対応に追われて一睡もできない時期が続いたものだ。
それに比べれば現在の忙しさは、まだマシだと思える。
急ぎの書類に目を通してサインを終えると、それをジェラールに手渡しながら問いかける。
「セレスティアはどうしている? 体調に変化はないか?」
「ご安心ください。転倒による後遺症はなく、むしろ以前にも増してお元気でございます。よく食べ、よく眠り、毎日のようにクリスティーヌ様の部屋で遊んでおられると、ポーラが申しておりました」
「なに……? あの人見知りなセレスティアが、もう懐いたのか?」
「はい。とても仲睦まじいご様子だと伺っております」
「信じられないな……」
父親であるアルフレッドでさえ、怯えられなくなったのは、つい最近のことだというのに。
(羨ましい)
胸に湧き上がるその本音は、しかし彼の口からこぼれることはなかった。
「健やかに過ごしているのなら、それでいい。ただし、クリスティーヌはあの狡猾なメディス侯爵の娘だ。実家と縁を切ることを条件に迎えたが、万が一にもセレスティアに危害を加えることのないよう、十分に注意するようポーラに改めて伝えてくれ」
「かしこまりました」
胸に手を当てて軽く一礼したジェラールが、そのまま上着の内ポケットから一通の封筒を取り出し、恭しく差し出してきた。
「これは?」
「お嬢様からのお手紙でございます。何日か前に、わざわざ家令室までお越しになりまして。旦那様がお戻りになった際に渡してほしいと、頼まれました」
封筒を裏返してみると、ご丁寧に封蝋まで押されている。
垂らした蝋の量が多く、さらには押印の力加減もうまくいかなかったのだろう。封蝋はひどく不格好な形をしていた。
どうやら我が娘は手先が不器用らしい。アルフレッドはなごやかな気持ちで封を解き、手紙を取り出す。
白地に桃色の花柄がついた便せんには、三歳にしては綺麗な字でこう綴られていた。
例えば赤色に輝く〝火鉱石〟は、振動や衝撃を受けると発熱する性質を持ち、繊維に織り込んで防寒具などに利用されている。
他にも、灰色の〝遮熱石〟は高い断熱効果を誇り、水色にきらめく〝冷鉱石〟は空気に触れると冷たくなるため、夏の暑さをやわらげる冷感素材として国内外で重宝されている。
こうした多様な輝石の加工・輸出と、安定した税徴収によって、リシャール公爵家は国内でも屈指の豊かさを誇る名家となった。
その巨万の富を背景に、古くから王宮へ令嬢令息を送り込み、数多の王妃や側妃、宮廷高官を輩出。そうして徐々に王室との繋がりを深めていき、数代前からは国王陛下や王太子の相談役も任されるようになったのである。
アルフレッドもまた歴代当主の例に漏れず、二十歳で当主になってから約六年。
リシャール公爵として領地を治めるかたわら、王族の公務を補佐する政務府長として王宮勤めもこなしている。
今でこそ激務にも慣れたが、家督を継いだばかりの頃は常に仕事に追われる日々だった。
さらに五年前にはグランフェリシア王国内で大規模な災害と飢饉が発生し、その対応に追われて一睡もできない時期が続いたものだ。
それに比べれば現在の忙しさは、まだマシだと思える。
急ぎの書類に目を通してサインを終えると、それをジェラールに手渡しながら問いかける。
「セレスティアはどうしている? 体調に変化はないか?」
「ご安心ください。転倒による後遺症はなく、むしろ以前にも増してお元気でございます。よく食べ、よく眠り、毎日のようにクリスティーヌ様の部屋で遊んでおられると、ポーラが申しておりました」
「なに……? あの人見知りなセレスティアが、もう懐いたのか?」
「はい。とても仲睦まじいご様子だと伺っております」
「信じられないな……」
父親であるアルフレッドでさえ、怯えられなくなったのは、つい最近のことだというのに。
(羨ましい)
胸に湧き上がるその本音は、しかし彼の口からこぼれることはなかった。
「健やかに過ごしているのなら、それでいい。ただし、クリスティーヌはあの狡猾なメディス侯爵の娘だ。実家と縁を切ることを条件に迎えたが、万が一にもセレスティアに危害を加えることのないよう、十分に注意するようポーラに改めて伝えてくれ」
「かしこまりました」
胸に手を当てて軽く一礼したジェラールが、そのまま上着の内ポケットから一通の封筒を取り出し、恭しく差し出してきた。
「これは?」
「お嬢様からのお手紙でございます。何日か前に、わざわざ家令室までお越しになりまして。旦那様がお戻りになった際に渡してほしいと、頼まれました」
封筒を裏返してみると、ご丁寧に封蝋まで押されている。
垂らした蝋の量が多く、さらには押印の力加減もうまくいかなかったのだろう。封蝋はひどく不格好な形をしていた。
どうやら我が娘は手先が不器用らしい。アルフレッドはなごやかな気持ちで封を解き、手紙を取り出す。
白地に桃色の花柄がついた便せんには、三歳にしては綺麗な字でこう綴られていた。