【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
「何度お呼びしても反応がございませんでしたので、心配いたしました。お加減が悪いのですか?」

「いや、少し考え事をしていただけだ。問題ない」

「でしたら、よいのですが……。視察からお戻りになったばかりですし、お疲れでしょう。お嬢様とのお食事会は、いかがなさい──」

「問題ない。行くと伝えてくれ」

 言葉を遮るように即答すれば、ジェラールは一瞬目をまたたかせ、それから柔和な微笑を浮かべた。

「承知いたしました。お嬢様もさぞお喜びになることでしょう」

「……だと、いいが」

 歯切れの悪い返答から、アルフレッドの父親としての自信のなさが伝わったのだろう。ジェラールが「実は」と前置きした上で、穏やかに話しはじめる。

「家令室にお越しになった日から、お嬢様はたびたび厨房へ足をお運びになっておりました」

「厨房に? 何用だ」

「料理長に伺いましたところ、視察帰りでお疲れの旦那様と、嫁いできたばかりで心労の多い奥様のために、晩餐会の計画を熱心に立てておられたそうです。『お父様、早く帰ってこないかな』と、しきりに口になさっていたようですよ」

「そうか……俺の帰りを、待ち望んでいてくれたのか……」

 鋭さを増していく顔つきとは裏腹に、胸の奥はじんわりと温かくなっていく。

「これは是が非でも、急ぎの仕事を終わらせなければいけないな」

 さっそく手元の資料に目を通しはじめる。
 
 その面持ちはいつもと変わらぬ無表情。
 だが紙の上を滑るペンは、おどるように軽やかだった。


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