【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
第6話:晩餐会の幕開け
その日の夜、公爵邸のダイニングルームに初めて家族全員が揃った。
普通の家庭であれば和やかな団らんの場にはるはずだが、リシャール家は一筋縄ではいかない。
すでに席についていたクリスティーヌは、アルフレッドが部屋に入ってくるなり、弾かれたように立ち上がって頭を下げた。
そんな妻をアルフレッドは一瞥しただけでなにも言わず、使用人に椅子を引かれて静かに腰を下ろす。
クリスティーヌもまたおずおずと着席し、萎縮した様子で目を伏せた。
息苦しさを覚えるほどの静けさが、その場を満たしていく。
(あちゃあ……)
『お葬式みたいな雰囲気ですわね』
テーブルの上で丸くなって様子を眺めていたマリアベルが、やれやれと言わんばかりに呟いた。
気まずくなるのは覚悟していたものの、それでもふたりとも大人だ。
子供の手前、表向きはある程度仲よくするのではと踏んでいたが、もはや取り繕う余地もないほど関係はよくないのだろう。
セレスティアは「コホン!」と咳払いして場を仕切り直すと、ドレスの裾を持ってペコリとお辞儀をした。
「きょうは、おこしくださり、ありがとう、ございます! たのしんで、くださいねっ!」
ひとまず噛まずに言えてホッと胸を撫で下ろす。
ふぅと息をつきながら着席すると、隣に座るクリスティーヌが小さく拍手を送ってくれた。
「ご挨拶、とてもお上手でしたよ」
「そう? えへへっ」
セレスティアが照れてはにかめば、クリスティーヌも強ばっていた表情をほんの少しだけ緩め、口元に淡い弧を描く。
そうしている間に、給仕の使用人たちが食前酒を運んできた。
それぞれの好みにあわせ、アルフレッドには赤、クリスティーヌには白ワインが注がれる。
セレスティアのグラスを満たしたのは深紅の飲み物。
見た目は赤ワインによく似ているが、もちろん酒精は含まれておらず、いつも飲んでいる赤葡萄の果実水だ。
セレスティアはグラスの柄を両手で握り、こぼさぬよう慎重に持ち上げる。
「ではっ! おとうしゃま、おかえり、なさい! くりすちーぬさま、わがやに、ようこそ! きょうという、すばらしいひに──かんぱーい!」
元気よく音頭をとるとアルフレッドは静かに、クリスティーヌは微笑を湛えて、それぞれグラスを掲げた。
いよいよ、晩餐会の幕開けだ。