【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
セレスティアはグラスに軽く口をつけると、そっと視線を動かして給仕の使用人頭に合図を送った。
ほどなくして三人の前に、軽くつまめる前菜が運ばれてくる。
「海老と春野菜の揚げ物でございます」
春らしい薄桃色の小花が描かれた皿には、アルフレッドの好物だというリシャール公爵領産の海老と、今が旬のホワイトアスパラガス。
そしてクリスティーヌが好んでいるという菜の花が綺麗に盛り付けられていた。
素材の味を活かすためか白い衣は薄く、海老の赤と春野菜の白や緑、淡い黄色が美しく映えている。
まずは前菜にふたりの好物を出し、つまみと酒で緊張を解きほぐした方がよい──事前の打ち合わせの際に、シェフからそう助言をもらったのだ。
両親の反応は気になる。けれど空腹のあまり、セレスティアの視線はおのずと目の前の料理へと吸い寄せられていく。
(わぁ、美味しそう……! お父様のお仕事が終わるのを待っていたから、もうお腹ペコペコだよ)
まずはホワイトアスパラに手を伸ばす。
フォークを刺すと衣がサクッと心地よい音を奏でた。
待ちきれず口に運ぼうとしたその時、隣から焦りを帯びた声が飛んできた。
「あっ、待ってください、セレスティアさん。熱いですよ。食べやすいように切り分けてもよろしいですか?」
コクリと頷けば、クリスティーヌは自分の皿のフリットを手早く一口大に切り分け、セレスティアの皿と取り替えた。
「必ず『ふーふー』って、してくださいね」
「はい! くりすちーぬさま、ありがとう、ございます」
「ふふっ、どういたしまして」
言われた通りに「ふー、ふー」とフリットに息を吹きかけ、少し冷ましてから口に運ぶ。
衣はサクッと香ばしく、中のホワイトアスパラガスは繊維が柔らかくほどけ、ほんのりとした甘みが口の中に広がっていく。
「はふはふ……おいひぃ……」
「えぇ、美味しいですね」
頬に手を当ててしみじみと呟けば、クリスティーヌも和やかな表情で頷いた。
ほんのわずかではあるが、肩の力が抜けてきたように見える。
一方のアルフレッドは表情を変えぬまま、赤ワインを嗜みつつ黙々と食事を続けていた。
『やっぱり、アルフレッドは手強いわね』
(でも、大丈夫。まだまだこれからだもの)
マリアベルの言葉に心の中で応えながら、セレスティアは海老のフリットを囓った。
アスパラガスよりも衣が厚く、外側はふんわり。中の海老はぷりっと弾けて、食感の違いが楽しい。
味付けはシンプルに塩とレモンだけだが、その分、素材の旨味が引き立っていた。
(うむ。やるな、シェフ)
あっという間に二種を平らげ、最後に残ったのは菜の花のフリットだ。
春に旬を迎える菜の花は栄養が豊富で、傷の治りを早めたり免疫力を高めたりする働きがある。
前世でもよく摘んで食べていた馴染み深い食材だ。
サクッとした衣と、歯ごたえのある菜の花。
(ん~! これこれ、懐かしい)
そんなことを思いながら咀嚼していると──。
「うげっ。にがいぃ」
子供の舌は味覚が鋭いのか、口内に土のような独特なえぐみが広がる。
セレスティアは慌てて飲み物に手を伸ばし、両手でグラスを抱えてゴクゴクと甘酸っぱい果汁を飲み干した。
ようやく苦みが引いて「ふぅ……」と息をつくと、クリスティーヌがすかさず唇の端をナプキンで優しく拭ってくれる。
「菜の花のほろ苦さは、セレスティアさんにはまだ早い大人のお味でしたね」
「む。おいしかったもん。こどもじゃ、ないもん」
「ふふっ、これは失礼しました」
唇を尖らせムキになって大人だと主張するセレスティア。その行動自体が子供の証なのだが、本人は気付いていない。
そんな三歳児に微笑みを向けていたクリスティーヌだが、ふとセレスティアから視線を外した瞬間、その顔はまたたく間に凍りついてしまった。
(ん? どうしたんだろう?)
ほどなくして三人の前に、軽くつまめる前菜が運ばれてくる。
「海老と春野菜の揚げ物でございます」
春らしい薄桃色の小花が描かれた皿には、アルフレッドの好物だというリシャール公爵領産の海老と、今が旬のホワイトアスパラガス。
そしてクリスティーヌが好んでいるという菜の花が綺麗に盛り付けられていた。
素材の味を活かすためか白い衣は薄く、海老の赤と春野菜の白や緑、淡い黄色が美しく映えている。
まずは前菜にふたりの好物を出し、つまみと酒で緊張を解きほぐした方がよい──事前の打ち合わせの際に、シェフからそう助言をもらったのだ。
両親の反応は気になる。けれど空腹のあまり、セレスティアの視線はおのずと目の前の料理へと吸い寄せられていく。
(わぁ、美味しそう……! お父様のお仕事が終わるのを待っていたから、もうお腹ペコペコだよ)
まずはホワイトアスパラに手を伸ばす。
フォークを刺すと衣がサクッと心地よい音を奏でた。
待ちきれず口に運ぼうとしたその時、隣から焦りを帯びた声が飛んできた。
「あっ、待ってください、セレスティアさん。熱いですよ。食べやすいように切り分けてもよろしいですか?」
コクリと頷けば、クリスティーヌは自分の皿のフリットを手早く一口大に切り分け、セレスティアの皿と取り替えた。
「必ず『ふーふー』って、してくださいね」
「はい! くりすちーぬさま、ありがとう、ございます」
「ふふっ、どういたしまして」
言われた通りに「ふー、ふー」とフリットに息を吹きかけ、少し冷ましてから口に運ぶ。
衣はサクッと香ばしく、中のホワイトアスパラガスは繊維が柔らかくほどけ、ほんのりとした甘みが口の中に広がっていく。
「はふはふ……おいひぃ……」
「えぇ、美味しいですね」
頬に手を当ててしみじみと呟けば、クリスティーヌも和やかな表情で頷いた。
ほんのわずかではあるが、肩の力が抜けてきたように見える。
一方のアルフレッドは表情を変えぬまま、赤ワインを嗜みつつ黙々と食事を続けていた。
『やっぱり、アルフレッドは手強いわね』
(でも、大丈夫。まだまだこれからだもの)
マリアベルの言葉に心の中で応えながら、セレスティアは海老のフリットを囓った。
アスパラガスよりも衣が厚く、外側はふんわり。中の海老はぷりっと弾けて、食感の違いが楽しい。
味付けはシンプルに塩とレモンだけだが、その分、素材の旨味が引き立っていた。
(うむ。やるな、シェフ)
あっという間に二種を平らげ、最後に残ったのは菜の花のフリットだ。
春に旬を迎える菜の花は栄養が豊富で、傷の治りを早めたり免疫力を高めたりする働きがある。
前世でもよく摘んで食べていた馴染み深い食材だ。
サクッとした衣と、歯ごたえのある菜の花。
(ん~! これこれ、懐かしい)
そんなことを思いながら咀嚼していると──。
「うげっ。にがいぃ」
子供の舌は味覚が鋭いのか、口内に土のような独特なえぐみが広がる。
セレスティアは慌てて飲み物に手を伸ばし、両手でグラスを抱えてゴクゴクと甘酸っぱい果汁を飲み干した。
ようやく苦みが引いて「ふぅ……」と息をつくと、クリスティーヌがすかさず唇の端をナプキンで優しく拭ってくれる。
「菜の花のほろ苦さは、セレスティアさんにはまだ早い大人のお味でしたね」
「む。おいしかったもん。こどもじゃ、ないもん」
「ふふっ、これは失礼しました」
唇を尖らせムキになって大人だと主張するセレスティア。その行動自体が子供の証なのだが、本人は気付いていない。
そんな三歳児に微笑みを向けていたクリスティーヌだが、ふとセレスティアから視線を外した瞬間、その顔はまたたく間に凍りついてしまった。
(ん? どうしたんだろう?)