【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
「君が自室から出るのを控え、周囲に迷惑をかけないように振る舞っているのは、初日の俺の発言が原因だろうか?」

「それは……」

 本音を言ってもよいものか迷い、クリスティーヌは口ごもる。

 なにせアルフレッドは、リシャール公爵家に害を成す者、無礼な者、果てには気に食わぬ者に対しては、たとえそれが親族であっても容赦しない。

 そのことから一部の貴族の間では、冷徹無比な〝氷の冷徹閣下〟と呼ばれているそうだ。

 クリスティーヌは社交界に出た経験がないため、その噂を直接耳にしたわけではない。

 ただ嫁ぐ前に〝親切な〟姉が、愉快そうにそう語っていたのを覚えている。

 今日はどのような心境の変化で謝罪してくれたのか分からないが、アルフレッドが厳格な人物である以上、迂闊な返答は控えるべきだ。

 ここは当たり障りのない答えに留めようか。

(いいえ、それでは駄目だわ)

 気持ちは、伝える努力をしないと届かない。

 みずからの想いを言葉にする大切さを、クリスティーヌはセレスティアから学んだ。

 初対面の時、彼女は『くりすちーぬさまが、きてくれて。すごく、うれしい、ですっ!』と、一生懸命に心の内を話してくれた。

 アルフレッドの言葉が正しければ、臆病な性格のセレスティアにとって、それはとても勇気のいる行動だったに違いない。

 それでも、彼女が恐れを振り切ってクリスティーヌに歩み寄ってくれたおかげで、ふたりは早々に打ち解け合い、今の関係を築くことができた。


(いつまでも尻込みしていてはいけないわ。だって私は──セレスティアさんの継母(はは)なのだもの)


 クリスティーヌは意を決し、引き結んでいた唇をほどいた。


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