【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
「もし旦那様がこの縁談を受け入れてくださらなければ、私は四十以上も年の離れた侯爵様の愛妾にならざるを得ませんでした。そんな私をお救いくださった旦那様には深く、感謝しております」

 だからこそ、アルフレッドの迷惑になるような行動はできなかった。
 万が一にでもこの屋敷を追い出されたら、クリスティーヌには行く当てがない。
 いや、実家へ送り返されたら、それこそ未来すらないのだ。

「縁談を取りまとめてくださったスチュアート殿下とヒルデガルト様にも誓いましたが、家を出た日から私はメディス侯爵家との縁を切りました。恩人である旦那様を裏切るような行いは、決していたしません」

 目をまっすぐに見つめ、みずからの意志と決意を告げれば、クリスティーヌの本気が伝わったのだろう。アルフレッドが「分かった」と深く頷いた。

「信じてくださり、ありがとうございます、旦那様」

 思いが通じてよかったとクリスティーヌは安堵の微笑を浮かべる。そしてなごやかな雰囲気に背中を押され、思い切ってひとつ相談をしてみることにした。

「その、ひとつお許しをいただきたいことが、あるのですが……」

「なんだ?」

「これからはもっと、セレスティアさんのおそばにいたいと思っております。母として妻として、至らないところも多々あるかと存じますが、精一杯努めますので、挑戦するお許しを……いただけますでしょうか?」

「そのようなこと、俺が許しを与えるまでもない」

 もちろんだ、とアルフレッドは力強く答えた。

「俺も父親として至らないところばかりだ。夫としても、気遣いや言葉が足らず苦労をかけることもあるかもしれない。だが、君の覚悟を裏切るような不誠実な行いはしないと誓おう」

 アルフレッドは居住まいを正すと、澄んだアイスブルーの瞳でクリスティーヌを見つめ、真摯な口ぶりで告げてくる。


「これからも、よろしく頼む。──〝クリスティーヌ〟」


 夫の口から初めて告げられた自身の名前。
 それが真に歓迎された証のように思えて、クリスティーヌの胸に喜びが広がっていく。

「はい! こちらこそ、よろしくお願いいたします、旦那様」

 湧き上がる歓喜のままクリスティーヌが微笑みを浮かべれば、気のせいかもしれないが、アルフレッドの口角が少し、本当にほんの少しだけ。

 (うわ)向いたように見えたのだった。


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