【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
~ 迫る災厄 ~
第1話:謎の妖精
──タスケテ……タスケテ……。
まどろみの中、かすかな声が耳に届く。
最初は隙間風のように小さな音。
それが段々と大きくなっていき、眠りを妨げられたセレスティアは眉間にしわを寄せて寝返りを打った。
『……オイ! オイ!』
「んんぅ……うるしゃいよぉ……」
『オイ! オキロ! タスケロ! ニンゲン!』
「ふぇ……? ──うわっ⁉」
騒々しさにまぶたを持ち上げた瞬間、セレスティアは至近距離にあった毛むくじゃらの顔面に驚いた。
子供のような丸い顔にぎょろりとしたふたつの目。
口は頬の辺りまで裂けており、ギザギザとした鋭利な牙が覗いている。
耳の形は人間に近いものの、上部がピンと尖っていた。
大きさは小人と同じくらいの親指サイズ。
全身が黒い毛で覆われており、二本の後ろ足で立つ姿は猿にも少し似ているが、まとう雰囲気は普通の動物とは明らかに違う。
見た目からして妖精である。
しかし、ただでさえ前世の記憶はところどころ穴が空いておぼろげなのに、そのうえ寝起きのぼやけた頭ではその種族は判然としない。
「えぇっと……どちらさま?」
セレスティアは目をパチクリさせながら問いかけた。
だが毛むくじゃらの謎妖精はなにも答えず、慌てた様子でベッドから飛び降りると鏡台の方へと走っていく。
『んん……? どうしたの? まだ夜明け前じゃないの……』
隣で寝ていたマリアベルも騒々しさに目が覚めてしまったようだ。
『ふぁ~』と大きなあくびをすると、お尻を高く上げて前足を突き出し、ぐーっと伸びをする。
「あのようせいが、タスケテって」
『えぇ? 妖精?』
セレスティアの視線をたどり、マリアベルもそちらへと目を向ける。
椅子の前脚をよじ登ったその妖精は、そこから鏡台へと身軽にジャンプ。天板部分に見事着地し『ふぅ』と手の甲で額をぬぐうと、白地に金装飾の小物入れを指さし『タスケテ』と連呼している。
セレスティアが近づいてみると、小物入れの中からも『タスケテ』とくぐもった声が聞こえてきた。