【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜
第2話:妖精のお礼と波乱の予感
『ワタシ、マエ、ノウエンノオヤシキ、イタ。ソコ、アイツラ、イタ。ダカラ、ヒッコシタ』
「ええっと……ちょっとまってね」
ボギーの話し方は、たどたどしい上に早口で聞き取りにくい。
セレスティアは一旦待ってもらい、内容を頭の中で整理する。
(『ノウエンノオヤシキ』……あっ、農園のお屋敷ね! そこに『アイツラ』っていうのがいたから、ボギーたちはわたしの家に引っ越してきたと……)
言葉の意味は理解できたものの、この話がお礼とどう繋がるのか、いまいち意図が分からない。
しかし人間と妖精、種族が違うのだから意思疎通が難しいのは当然だ。
むしろマリアベルのように、人間界の文化や言語に精通している方が珍しいくらいである。
【話が通じにくいからといって、妖精の言葉を無視したり否定したりしてはいけないよ。異なる種族、価値観だからこそ、根気よく対話を続けることが大切なのさ】
前世の祖母は、ことあるごとにそう言っていた。
妖精の想いを汲み取り、ともに助け合って生きていく。
それが《緑の民》として生まれた者の魂に刻まれた責務なのだから、と。
セレスティアは結論を急がず、優しくボギーに言葉の先を促した。
「ありがとう。つづき、おしえて」
『アイツラ、コトシ、タクサン、ウマレル』
「その『アイツラ』って?」
『ガイコツムシ。アイツラ、フコウヲハコブ。ニンゲン、キヲツケテ』
そう告げたボギーは、話は終わりとばかりに素早く踵を返し、ネズミ穴の向こうに姿を消してしまった。
(不幸を運ぶ、『ガイコツムシ』……)
妖精たちがそう呼ぶ虫に、ひとつだけ心当たりがある。
『〝死骸虫〟でしょうね』
マリアベルの呟きに、セレスティアは深刻な面持ちで頷いた。
────死骸虫。
六本足に二枚の羽、見た目や動きはバッタによく似ているが、大きな違いが見て取れるのは胴体部分。
死骸虫は本来あるべき内臓がまるでなく、胸や腹が干からびた骸骨のようになっているのだ。
前世で見たことがあるけれど、決して美しい虫ではない。
昆虫が好きなセレスティアでさえ顔をしかめるのだから、苦手な人が目の当たりにしたら卒倒してしまうだろう。
(『ニンゲン、キヲツケテ』って言ってたけど、見た目が気持ち悪いから気を付けてってこと?)
『いいえ、違うわ。おそらく、蝗害の再来を警告しているんだと思いますわ』
(コウガイの再来?)
『あぁ、そういえば、アナタはまだ生まれていなかったんですわね。──五年前、死骸虫が大量に発生したんですのよ』