【完結】転生幼魔女は生き延びたい!~唯一無二の力はナイショだよ〜

第2話:妖精のお礼と波乱の予感


『ワタシ、マエ、ノウエンノオヤシキ、イタ。ソコ、アイツラ、イタ。ダカラ、ヒッコシタ』

「ええっと……ちょっとまってね」

 ボギーの話し方は、たどたどしい上に早口で聞き取りにくい。
 セレスティアは一旦待ってもらい、内容を頭の中で整理する。

(『ノウエンノオヤシキ』……あっ、農園のお屋敷ね! そこに『アイツラ』っていうのがいたから、ボギーたちはわたしの家に引っ越してきたと……)

 言葉の意味は理解できたものの、この話がお礼とどう繋がるのか、いまいち意図が分からない。

 しかし人間と妖精、種族が違うのだから意思疎通が難しいのは当然だ。
 むしろマリアベルのように、人間界の文化や言語に精通している方が珍しいくらいである。

【話が通じにくいからといって、妖精の言葉を無視したり否定したりしてはいけないよ。異なる種族、価値観だからこそ、根気よく対話を続けることが大切なのさ】

 前世の祖母は、ことあるごとにそう言っていた。

 妖精の想いを()み取り、ともに助け合って生きていく。
 それが《緑の民》として生まれた者の魂に刻まれた責務なのだから、と。

 セレスティアは結論を急がず、優しくボギーに言葉の先を促した。

「ありがとう。つづき、おしえて」

『アイツラ、コトシ、タクサン、ウマレル』

「その『アイツラ』って?」

『ガイコツムシ。アイツラ、フコウヲハコブ。ニンゲン、キヲツケテ』

 そう告げたボギーは、話は終わりとばかりに素早く踵を返し、ネズミ穴の向こうに姿を消してしまった。

(不幸を運ぶ、『ガイコツムシ』……)

 妖精たちがそう呼ぶ虫に、ひとつだけ心当たりがある。

『〝死骸虫(シガイチュウ)〟でしょうね』

 マリアベルの呟きに、セレスティアは深刻な面持ちで頷いた。


 ────死骸虫。
 六本足に二枚の羽、見た目や動きはバッタによく似ているが、大きな違いが見て取れるのは胴体部分。
 死骸虫は本来あるべき内臓がまるでなく、胸や腹が干からびた骸骨(がいこつ)のようになっているのだ。

 前世で見たことがあるけれど、決して美しい虫ではない。
 昆虫が好きなセレスティアでさえ顔をしかめるのだから、苦手な人が目の当たりにしたら卒倒してしまうだろう。

(『ニンゲン、キヲツケテ』って言ってたけど、見た目が気持ち悪いから気を付けてってこと?)

『いいえ、違うわ。おそらく、蝗害(こうがい)の再来を警告しているんだと思いますわ』

(コウガイの再来?)

『あぁ、そういえば、アナタはまだ生まれていなかったんですわね。──五年前、死骸虫が大量に発生したんですのよ』

< 47 / 86 >

この作品をシェア

pagetop